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躍進するアイルランド産乳製品 自然の恵み生かした牧草肥育 日本市場で着実に支持広げる
高品質な乳製品の生産で知られる、欧州の農業大国アイルランド。生産量は国内消費量を大きく上回り、世界140以上の国・地域に輸出されている。
昨年の日本向け乳製品輸出量は、前年比12%(約1万7000t)と2ケタ成長。このうちバターは488%増、ホエイは167.2%増、チーズは12%増など好調だ。世界の乳製品市場が弱含みで推移するなかでも、日本市場でのアイルランド産乳製品への需要は着実に高まっている。
成長の背景には、日本のバイヤーとアイルランドの乳製品輸出業者との長年にわたる良好な関係の構築がある。
アイルランド政府食糧庁(ボード・ビア)の乳製品部門マネージャー、マーガレット・バトラー氏は次のように述べる。
「日本のバイヤーとアイルランドの乳製品輸出業者は、長年にわたり関係を強化してきました。輸出の伸びの多くはチーズが牽引しましたが、バターやホエイなど他のカテゴリーでも成長の余地があり、どちらも堅実に輸出額が増加しています」
ボード・ビアは、アイルランドの食品と飲料のプロモーションとマーケティングを担当する政府機関。プレミアムな乳製品に関心のある日本の顧客をターゲットに、小売事業者との協力や食品フェアへの参加、デジタルマーケティングの実施など、プロモーション活動に積極的に取り組んでいる。
「欧州連合(EU)との協力キャンペーン『ヨーロピアン乳製品fromアイルランド』のサポートも得ながら、各業界の知見に基づいた強力な関係を通じて、アイルランド産乳製品の明確に差別化された特長をさらにアピールしていきます」(バトラー氏)。
和洋のメニューに幅広く活躍
豊かな風味とクリーミーさを備えたアイルランドの乳製品は、伝統的な日本料理にも世界各国の料理にも幅広く活躍する。
日本で最もポピュラーなのがチーズだ。昨年の輸入量は約1万5000tと、2019年から9%増加。アイルランドの乳製品に対する認知度が、消費者レベルで高まっていることを裏付けている。近年では日本の顧客からの要望に応え、特別なチーズ製品の開発を手がける企業も登場している。
またグラスフェッド(牧草肥育)バターも注目アイテムのひとつ。その優れた品質と豊かな風味、クリーミーな食感には、自然で健康的な選択肢を求める日本の消費者から支持が高まりつつある。なかでも「ケリーゴールド」は、ドイツ、アメリカでそれぞれNo.1、2の世界的ブランドだ。
さらにグラスフェッドホエイは、牧草飼育の乳牛から供給されているという評判と品質の高さにより、健康志向の日本の消費者の間で人気が高まっている。
動物性たんぱく質の中で最も栄養価の高いものの一つとして知られ、アスリート、フィットネス愛好家、健康を気づかう人向けのプロテインバーやシェイクなどのさまざまな機能性食品や飲料に使われている。
これらを生み出しているのは、高い技術力と最新の設備とともに、生産者から加工・製品化まですべての過程に導入された最新テクノロジー。世界の顧客が要求する厳しい基準を満たし、時代とともに変化する要求に対しスピーディーに対応する産業構造により、高品質な乳製品を世界中に供給している。
栄養価抜群のグラスフェッド生乳 研究で明らかに
アイルランドのグラスフェッド生乳は、従来の室内飼育の牛から取れる生乳よりも栄養素を多く含んでいることが、近年の研究で分かってきている。
Teagasc(農業食品開発局)とFood for Health Ireland (FHI)の研究者は、牧草の割合が高い飼料で育ったアイルランドの牛のほうが、オメガ3脂肪酸と共役リノール脂肪酸(CLA)の割合が高いことを発見。より栄養価の高い生乳を生産することが判明した。
「アイルランドでは牧草が主原料として最も一般的ですが、アメリカ、ドイツ、オーストリア、デンマークなどの国々では、乳牛に与えられる新鮮な牧草の量はアイルランドよりかなり少ないのが現状です」と、コーク州ムーアパークにあるTeagasc食品研究センターのマーク・ティムリン博士研究員は説明する。
最高水準の安全性とサステナビリティ
アイルランドは温暖な気候、きれいな空気、豊富な降水量、豊かな土壌に恵まれ、草の生育期が北半球で最も長い国だ。1年間の3分の2を放牧され、牧草で育った乳牛から採れる生乳には、天然の栄養素が凝縮されている。
同国の酪農業は、世代から世代へと受け継がれる小規模な家族経営がほとんど。国家的な食品持続可能性プログラム「オリジングリーン」によって、安全性と持続可能性を約束する。 農家だけでなく、食品メーカー、小売店、外食事業者も共通の目標を持ち、世界最高水準の安全性とサステナビリティを目指している。