伊藤園がヨーロッパ本格進出 紅茶文化が根づくエリアで「お~いお茶」に勝算はあるのか?

 伊藤園は4月1日、ドイツ・デュッセルドルフ市に子会社(ITO EN Europe GmbH)を設立してヨーロッパに本格進出する。

 厳格なことで知られる原料・包材に関するEUの法規制を、現地生産会社の協力のもと、海外向け飲料用原料を使用して突破口を開いた。

 ヨーロッパで初の拠点を構えるドイツでは、2022年から飲料製品(ドリンク)とリーフ製品を定期的にコンテナで輸出し現地の問屋を介して販売している。このほどドイツの法規制が強化されることで現体制ではビジネスの継続が危ぶまれる。

 ドリンクのキャップについては、7月から、開栓後も胴体部と切り離せられない “テザードキャップ”の導入が必須となる。

 この課題をクリアすべく、海外向け飲料用原料を使用した緑茶飲料製品の海外現地生産体制を確立し、テザードキャップ付き紙パック飲料製品の「お~いお茶」を販売していく。

 ヨーロッパ市場は、人口と市場規模の観点でかねてから着目していた。

 ヨーロッパ市場で見込む勝算について、取材に応じた中嶋和彦執行役員国際本部長は「紅茶中心の国はイギリスだけ。多くの欧州諸国ではコーヒーもよく飲まれ、中・東欧ではハーブティーも飲まれている。紅茶の飲まれ方としては、ミルクティーや、砂糖もある程度使われることが多いため、健康志向が高まると無糖の『お~いお茶』もいける」との見方を示す。

 最初の拠点にドイツを選んだ理由の1つに日本茶の輸入量を挙げる。

 「ドイツはアメリカ、台湾に次いで3番目に日本茶の輸入量が多いことから、ドイツを核にヨーロッパ市場全体をカバーしていきたい」と語る。

ドイツ子会社(ITO EN Europe GmbH)鈴木彰斗国際営業部第一課課長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
ドイツ子会社(ITO EN Europe GmbH)鈴木彰斗国際営業部第一課課長

 ドイツ子会社の代表に就くのは鈴木彰斗国際営業部第一課課長。現在、日本国内で海外現地法人がないヨーロッパ・中東・アフリカなどのエリアを担当する。

 その中で、同課では2年前からヨーロッパに注力している。

 鈴木課長は「経済規模などを考えて、投資をして収益化できる市場はどこだろうと俯瞰してみると、やはりヨーロッパだった。特にドイツは健康のために緑茶やハーブティーを飲まれる傾向もあり、人口約8500万人とヨーロッパの中で一番多く魅力ある市場」と語る。

 物流拠点としてもドイツに着目。「拠点を構えるデュッセルドルフ市は、アムステルダムに近く、アムステルダムにはヨーロッパ随一の規模の港湾がある」と説明する。

 鈴木課長は、基本、日本でドイツでのルートを開拓。時折、出張で商談に臨みながら販路を広げている。
 ドイツ子会社の代表に就任後は、これまでの流れを加速させる。

 「ヨーロッパはEU加盟国を中心に50カ国ほどあり、まずは面を拡大する。多くの方に伊藤園製品や『お~いお茶』を手に取ってもらえるように販売網を広げていく」と意欲をのぞかせる。