非合理性が動かす経済

昨年末にかけて、為替アナリストらは「来年はマイナス金利解除で円高確実」との予想を自信満々に語っていた。ところがドル円相場は年明けから上昇に転じ、利上げ決定後は逆に円安が加速した。

▼その後は「利上げ後も緩和的環境が続くとの見方が強まり…」など後出しじゃんけん的な解説が氾濫。だが「ファンダメンタルズに沿わず明らかに投機」(政府筋)であり、市場参加者の無数の思惑で動く相場など所詮誰にも読めないと痛感させられる。

▼非合理性をはらむ人間の行動が経済に与える影響を研究する「行動経済学」を確立したのが、先月死去した米国の心理学者ダニエル・カーネマン氏。「得る1万円より失う1万円のほうが大きい」と感じる損失回避心理の研究などで知られる。各人の合理的判断を前提としてきた従来の経済学に、新たな視点をもたらした。

▼くら寿司で5皿食べるごとに挑戦できる「ビッくらポン!」。1皿あたり10円追加すると3回に1回必ず景品が当たる仕組みが導入された。だがあの景品が150円で売っていたら、買う人はどれほどいるだろうか。行動経済学を応用したアイデアには脱帽だ。