即席カップ麺市場は、2度の価格改定(22年6月、23年6月)を経て、品揃えと店頭売価の細分化が進んでいる。背景はアフターコロナの消費変化と節約志向への対応だ。先行きが予測しづらいなか、メーカー、小売業とも全方位で需要の取り込みを図っている。
大手PB、2ケタ売価維持
24年1月下旬、セブン&アイグループのプライベートブランド(PB)「セブン・ザ・プライス」で98円(税別、以下同)のカップラーメンが新発売された。イトーヨーカドーなどスーパーの売場で最安値に位置付けられ、「醤油ラーメン」「豚骨ラーメン」の2品が大々的に売り出されている。背景には昨秋、「セブンプレミアム」のレギュラーカップ麺が98円から108円に値上げされたことがありそうだ。イオンは「トップバリュ」ブランドの「ベストプライス」(「コクとキレのしょうゆヌードル」108円など)とは別で、最安値88円の製品を「オールタイムヌードル」として提供する。以前ほどではないにせよ、「カップ麺市場は二ケタ売価を無視できない」(業界関係者)。
一方、価格改定でナショナルブランド(NB)の店頭売価は軒並みアップ。例えばトップブランドの「カップヌードル」(日清食品)は都内スーパーで定番価格188円、販促価格148円が定まりつつある。他社の有力ブランドも20~30円の差こそあれ、日替わり特売でも100円を切ることはほぼなくなった。
ただし、値上げ前に比べて定番品の店頭回転率は下がっている。その落ち込みをカバーすべくメーカー各社も動く。
日清食品は、マーケティングの一環で「店頭エンタメ化」に注力。スーパーの売場を様々なテーマで賑やかに演出し、実施店の販売は大きく伸長したという。また戦略的な視点で店頭価格にメリハリをつけた販促を強化。カテゴリーや期間を絞って価格コンシャスの高まりにも応えている。「物価高で買上点数が減るなど消費環境は厳しいが、当社ならではの商品や販促を通じ、価値を感じていただけるように取り組みたい」(同社)。
明星食品は、昨秋から「明星 五重塔戦略」と銘打ったマーケティング施策を推進。コロナ禍を経て消費は5層に細分化されたとし、最上位の「高級品志向」、定番主体の「レギュラー品志向」、質と量を備えた「格安プレミアム志向」、お得感ある「低価格品志向」、価格最重視の「超低価格品志向」をキーワードにきめ細かく品揃えする。
同社は「現在の消費行動は節約意識が強い。物価高と賃上げの好循環に期待したいが、まだまだ先行きは不透明。全方位のラインアップで備えたい」との考えだ。
価格競争の再燃を危惧
インテージSRI+データでカップ麺の業態別販売構成比(食数ベース)をみると、23年1~12月でスーパーは56.1%、前年比1.7%縮小した。人流回復でコンビニが1.3%アップし、成長著しいドラッグストアは0.4%増と続伸した。
メーカーの営業担当は「スーパーが顧客流出を防ぐため、値下げで対抗することを危惧している。われわれは価格競争に巻き込まれないよう、価値訴求が一段と重要になってくる」と話す。