トライアルホールディングス傘下のトライアルカンパニーは、独自のスマートストアの取り組みの一環として、スマートショッピングカートの進化と拡大に取り組んでいる。
スマートストアとは、IoT機器やAI技術を導入して、データの利活用をもとに新しい購買体験を提供したり効率的な運営を可能にしたりする店舗形態を指す。
その一端を担うスマートショッピングカートは、専用プリペイドカードもしくはアプリをカートに登録して、付属するスキャナーで来店客が自ら商品バーコードを読み取ることで通常のレジでの商品登録や会計の手順を省き専用ゲートを通過するだけでキャッシュレス会計を済ますことができるのが特徴となっている。
2018年の導入開始以降、改良を繰り返し、現在導入を進めているのが昨年開発された「4.0」バージョン。前身の「2.0」との最大の違いは、センサーによるスキャン漏れ防止機能を搭載した点にある。
取材に応じたトライアルカンパニーの野田大輔マーケティング部部長は「スキャンをせずに買い物カゴに入れると“商品のスキャン忘れはありませんか?”のお知らせが届く。18年の導入開始時からスキャンチェックをずっと行っているが、いつかはスキャンチェックをせずにお客様にお買い物していただける時代が来ると考えている」と述べる。
そのほか「2.0」との比較では、軽量化と車輪を大きく改良して動かしやすさを向上させた。
これにより消費者にとってはピーク時でもレジで待たされることなく専用ゲートを通り約30秒で決済できる。
一方、店側にとっては、店舗全体のレジ通過客数(スループット)を1.7倍に向上。レジ待ちなしによる利便性で来店頻度も高まり、必要となるレジ人員を20%削減する。
独自開発のAIレコメンドシステムも特徴。
カートの中に入れた商品や、顧客ごとに最適化されたオススメ商品をリアルタイムで提案し個別にクーポンも発行している。これにより、食用油の購入者に鶏肉を薦めるなどして非計画購買を促進していく。
「お店の売上げを上げていくときに物理的に障害になるのが駐車場のサイズとレジ。スループットが1.7倍向上し滞留時間が短くなれば駐車場も回転する」と語る。
スマートショッピングカートは4月末現在で159店舗に約1万5000台導入され、今後、全店に導入される予定。(つづく)
※流通報道記者会で5月取材