キリン、ペットボトルの資源循環に新技術 短時間・低エネルギーでPETを分解 使用する化学薬品のリサイクルも可能

 キリンホールディングスのキリン中央研究所はペットボトルの資源循環で新技術を編み出した。

 新技術は、化学的再生法と呼ばれるケミカルリサイクル上の技術となる。
 ケミカルリサイクルは、使用済みペットボトルをPET(ポリエチレンテレフタラート)樹脂の分子レベルまで分解する。

 今回開発された1つ目の新技術は、分解を従来のケミカルリサイクルの手法と比べて短時間・低エネルギーで実現するもの。

 プロセスにアルカリを使用することから「アルカリ分解法」と呼ばれる。

 12月15日発表したキリンホールディングスR&D本部キリン中央研究所の三輪真由佳氏は「従来の代表的なケミカルリサイクルではPETを分解するのに数百度程度の非常に高い温度や高圧条件、また数時間におよぶ処理が必要であったのに対し、今回開発した手法ではPETとアルカリ成分とアルコールを一定の割合で混ぜることで、35~55度という非常に低い温度で、かつ15分程度の短時間でPETを分解できる」と説明する。

 2つ目の新技術は、早稲田大学理工学術院との共同研究で開発された「電気透析」による精製法となる。

 ケミカルリサイクルでは、PETを化学的に分子レベルへ分解した後、精製という工程に入り、脱色・金属イオン除去・晶析を経て純度の高いBHETというモノマー(単量体)に仕上げていく。

 「電気透析」では、モノマーに仕上げていく際に必須とされる化学薬品を大幅に削減し、化学薬品の投入により発生が避けられなかった副産物の廃棄を不要とする。
 加えて「PET原料を取得する際、同時にアルカリを再生できるため、このアルカリをPET分解の工程で再利用できる」という。

 現在、この2つの技術は特許出願中で、新たなパートナーを探索して2030年までの実用化を目指す。

 「ペットボトルをリサイクルすることで、リサイクルしなかった場合と比較してCO2排出量などの環境負荷が大幅に削減する事例があるように、今回開発した技術を実用化することでペットボトルの資源循環を牽引して次世代につなげていきたい」と意欲をのぞかせる。

 なお、三菱ケミカルとの共同プロジェクトによるケミカルリサイクルの新技術に関する取り組みは収益性確保のめどが立たないとの理由で10月末に終了した。