三菱食品はこのほど、NPO法人トラストコーチング(東京都渋谷区、馬場啓介代表)が展開する、子どもとのコミュニケーション能力を高めるコーチングプログラム「ペアレンツコーチング」の社内展開第1号企業として認定された。
「ペアレンツコーチング」とは、トラストコーチングが提供する「マザーズコーチングスクール」をベースにしたプログラム。子どもの将来のコミュニケーション能力の土台となる4つの要素(考える力・自己肯定感・折れない心・思いやり)を育むことを目的に大人が学ぶコミュニケーション講座で、多くの企業や幼稚園、小学校などの教育機関でも導入が広がっている。
三菱食品は「明るく・楽しく・元気よく、そして前向きに」をスローガンに健康経営の取り組みを推進。役職員が心身ともに健康で、持てる力を最大限に発揮できる風土づくりに努めており、ペアレンツコーチングの導入はその一環。女性だけでなく、男性も家事・育児への参画が当たり前となる中で、社員の子育ての悩みや不安を少しでも解消し、仕事(ワーク)と生活(ライフ)を充実させ、業績や社会的評価の向上につなげることが狙いだ。
同社・人事グループ健康推進ユニットの藤田篤史リーダーは「『明るく・楽しく・元気よく、そして前向きに』というスローガンを達成するためには、肉体的・精神的・社会的な健康に加え、主体的行動、ワークとライフのコントロールが大切です。この5つの要素をバランスよく高めていくことで、私どもの健康経営推進のカギとなる「自己効力感」の醸成につながると考えています」と語る。
自己効力感とは、人生や仕事において、様々な困難が起きた時にも自分たちなら乗り越えられるという状態のこと。藤田氏は「ペアレンツコーチングを通じて、子育てが楽しいと実感してもらうだけでなく、人との関わりの中で大切なコミュニケーションスキルを学び、それがひいては自己効力感の向上、健康経営の推進につながると考えています」と導入の経緯を説明する。
藤田氏を含めた健康推進ユニットの3人が同プログラムのリーダー資格を取得し、子育て中の社員や関心のある社員を対象とした社内講座を開講。今年度は約50人(男性20人、女性30人)の社員が受講を予定しており、子育てに関する悩みや声かけなどのコーチングを楽しみながら学んでいる。
講師を務める丸山和子さんは「私自身もそうでしたが、育休後の復職や子育てについて社内で共有できる場があることは非常にうれしく感じています。オンライン講座も活用し、全国各地の仲間とコミュニケーションを深める場にしていきたい」という。
健康ユニットの菅原慶吾主任は「受講した社員からは、あらためて自分を客観視して子育てができるようになったという声を多く頂戴しています。親として、子どもに少し言い過ぎたかなと反省する場面があると思いますが、このプログラムを通じて自分を客観視して、ひと声かけられるようになる。そうした気づきは、子育てだけでなく、組織やチームの一員としても非常に重要な学びだと感じています」と語る。
また、三菱食品では多様な働き方を尊重し、仕事とプライベートを両立しやすい職場づくりを目的に、男性の育休取得率100%を目指している。食のビジネスを展開するうえで少子化対策は重要な課題であり、成熟化する国内市場を活性化するうえでも欠かせないテーマだ。「ペアレンツコーチングのような子育て支援策が社内に広がることで、子育てに対する関心が高まり、さらなる女性活躍や少子化の課題に対する一助になれば」と期待を寄せる。