未知なる感染症に罹患しないカラダづくりに一筋の光明が差す――。
内臓脂肪が多く、免疫の司令塔であるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性が低いと、新型コロナウイルス感染症・インフルエンザの罹患リスクが高いことが、キリンホールディングスと花王の共同研究によって日本で初めて明らかにされた。
両社は、和歌山県立医科大学が主宰しNPO法人ヘルスプロモーション研究センターが取りまとめているコホート研究「わかやまヘルスプロモーションスタディ」に参画し、2022年11月に和歌山県で50~55歳の住民223人を対象とした特定健診を実施した。
花王が生活習慣や内臓脂肪面積のデータを取得し、キリンが血液中のpDC活性に関するデータを測定。
11月24日、それらのデータを相互に共有し内臓脂肪とpDC活性の関わりを共同で研究・解析した成果が明らかにされた。
キリンホールディングスの藤原大介執行役員ヘルスサイエンス事業本部ヘルスサイエンス研究所所長は、内臓脂肪面積とpDC活性の関係について「内臓脂肪を低い群と高い群に分けたときに、低い群に比べて高い群はpDC活性が30%もダウンした。内臓脂肪の高い群はそもそもウイルスと戦う力が損なわれてしまっている」と説明する。
内臓脂肪が高いとpDC活性が低下するだけにとどまらず、内臓脂肪低値群との比較で慢性炎症が4倍増えることにも触れ「内臓脂肪が高いと老けやすいといえる」と述べる。
花王の大里直樹花王ヘルス&ウェルネス研究所特定テーマリーダーも「内臓脂肪が蓄積すると疾患がどんどん悪化していくことが最新の研究でわかった」と語る。
内臓脂肪は、胃や腸など内臓のまわりに蓄積した脂肪で、自覚しにくいがゆえに「体重ではなく内臓脂肪と免疫機能をしっかりケアすることが重要」と呼びかける。
内臓脂肪面積とpDC活性が感染症の罹患におよぼす影響については、内臓脂肪面積値が高くpDC活性の値が低い群は、内臓脂肪面積値が低くpDC活性の値が高い群と比較して、オッズ比(ある事象の起こりやすさを表す際に用いられる値)として20倍高く新型コロナウイルス感染症に罹患していたことが判明。
同様の結果が、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの両方の罹患との関係でも確認できたという。
「新規の感染症の脅威にさらされており、ワクチンなどで対処していくことは重要だが、未知なる感染症に罹患しないカラダづくりをしていくことは今後我々が健康に生きていく上で重要」と指摘する。
なおpDCは、NK細胞やキラーT細胞など複数の免疫細胞に指示を与えて統括するもの。個々の免疫細胞ではなく、司令塔であるpDCを活性化させることが、年々増加し多様化しているウイルス感染リスク対策に有効とされる。