缶チューハイなどのRTD酒類市場は、この10年で約2倍に成長。ビールなどに代わる食中需要の拡大から、一層の成長余地が見込まれる。酒税改正が進むなかでも、26年までは税率が据え置きとなることも追い風だ。増税となる新ジャンルからの需要流入も当て込み、成長市場でのシェア獲得へ各社は投資を集中させている。
ビール類の製造を昨年で終了したサッポロビール仙台工場(宮城県名取市)では、40億円を投じて新たに導入したRTDの製造ラインが10月から稼働開始した。
1971年竣工の仙台工場は、同社でも最も長い歴史を持つ工場として地域とともに歩んできた。このほどRTDの製造拠点として生まれ変わり、新たにスタート。現在「濃いめのレモンサワー」「男梅サワー」などRTD5品目とともに、ポッカサッポロフード&ビバレッジのカップ入りスープも製造する。
「10月から酒税改正がスタートし、消費動向を日々注視している」と語るのは、ビール&RTD事業部の永井敏文部長。新ジャンルからRTDへの需要シフトを見込むものの、まだ数値上は明確な流れが見えていないと話す。
ただ同社のRTD事業は絶好調。今春の新発売から3か月で2千万本を突破した「ニッポンのシン・レモンサワー」などによる押し上げ効果もあり、10月までの販売数量は累計113%で推移する。年間で過去最高売上を更新する見込みだ。
「メーカーとして、次なる新しい提案ができるか。しっかりお客様を捉えることができるかどうかは、そこにかかっている」(永井氏)。
掃部(かもん)晃工場長によれば、仙台工場の従業員は38人とビール製造時に比べてほぼ半減。効率的な体制で生産を行っているという。
「RTD製造ラインのコンセプトは、食品安全、生産性向上、働きやすさ、サステナブルの4本柱。これからも地域とともに、おいしい商品づくりに磨きをかけていきたい」(掃部工場長)。
新ラインの稼働により、RTDの自社生産能力は倍増。26年には自社製造比率88%を目指す。
ピューレや混濁果汁を使用する製品も製造可能となり、今後さらに特長ある多様な商品の開発に期待がかかる。