UCC上島珈琲はCO2フリー熱源とされる水素の導入を前進させる。
レギュラーコーヒー製造の主力工場「UCC富士工場」の大型焙煎機に水素バーナーを実装し、25年4月の運転開始を予定していることがこのほど明らかにされた。
同社は、東京ビッグサイトで開かれたアジア最大級のスペシャルティコーヒーの展示会「SCAJ2023」に出展。「水素焙煎コーヒー」のコーナーを設けてカーボンニュートラルに寄与する水素焙煎を紹介した。
9月27日、出展ブースで発表したUCCホールディングスの関根理恵氏は富士工場の水素焙煎機の特徴について以下の3つを挙げる。
――水素焙煎時のCO2排出ゼロ
――水素と化石燃料(LPGや都市ガス)の両方の熱源で焙煎が可能
――化石燃料熱源に比べて多彩な味覚表現が可能
当面は、水素の生産にかかるコストが高いことから、水素と化石燃料を併用して焙煎していく。コスト環境をみながら、段階的に水素の使用比率を引き上げていくことを想定している。併用可能なスタイルは、どちらかの熱源の供給がタイトになった際のリスクヘッジにもつながる。
味わいにも貢献する可能性も浮上。コーヒーの焙煎温度は味覚にも関わり、水素を熱源とすることで、焙煎の際の高温から低温の温度調整の幅が化石燃料よりも広くなることが明らかにされた。
例えば高温で一気に焙煎したり、途中からじわじわと温度を上げたりと多様なバリエーションで焙煎することができ、これにより豆の味わいをより引き出しうるという。
おいしさという付加価値がつけば、水素のコストと相殺される可能性もある。同社は引き続き水素焙煎による味わいも追求していく。
調達コスト低減を目的に、水素市場の拡大に向けた啓発活動にも力を入れる。トヨタモビリティ東京とコラボレーションし、今年5月のレクサス有明オープニングイベントの来場者に水素焙煎コーヒーを提供した。脱炭素化のという共通目標のため、今後も業界を超えて協力していく。
なお、特許は水素を燃料とする焙煎機ではなく、水素を熱源とするバーナーを対象としている。そのためUCCの取り組みは食品産業全体に波及する可能性をはらんでいる。
関根氏は「コーヒー産業はもとより、世界の食品産業の脱炭素化に貢献できるようになりたい」と意欲をのぞかせる。