顧客の声に耳を傾け品質と安心を徹底追求する味の素AGF 東の生産拠点・AGF関東の全貌に迫る

スティックコーヒーやレギュラーコーヒーのドリップバッグなどの包装工程では、包装資材のとじられているシール部分に内容物がはさまれる“嚙み込み”が稀に起こることがある。

味の素AGFは、顧客から過去寄せられた“噛み込み”などの声に耳を傾けて、クレームゼロを目指し改善に取り組み品質と安心安全を徹底追求している。

「いつでも、ふぅ。AGF®」をコーポレートスローガンに掲げ、AGFはコーヒーなどの嗜好飲料を飲んで“ふぅ”と一息つく心の充足の提案に注力しており、生産拠点をその屋台骨と位置付けている。

AGF関東では、横浜港から輸送されるコーヒー生豆を受け入れ精選・焙煎・配合・粉砕・包装の工程を経てギュラーコーヒー製品も一貫製造している - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
AGF関東では、横浜港から輸送されるコーヒー生豆を受け入れ精選・焙煎・配合・粉砕・包装の工程を経てギュラーコーヒー製品も一貫製造している

4月28日、AGFの子会社で東の生産拠点のAGF関東(群馬県太田市)を取材した。

AGF関東では、西の生産拠点・AGF鈴鹿で製造されたインスタントコーヒーを受け入れてインスタントコーヒー製品とスティック製品を製造している。

加えて、横浜港から輸送されるコーヒー生豆を受け入れ精選・焙煎・配合・粉砕・包装の工程を経てギュラーコーヒー製品も一貫製造している。

近年は市場拡大に伴いスティックの製造を強化。

取材に応じたAGF関東の富樫政昭社長は強化の歴史について
 
「2009年にスタートし、その後新しいラインも拡充されている。最近では高速タイプの充てん機も導入された」と説明する。

AGF関東の富樫政昭社長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
AGF関東の富樫政昭社長

スティックの製造量は年々拡大しており、その製造現場では、安全安心を前提に嗜好の多様化ニーズに応えるべく新技術を導入するなどして改良を重ねている。

スティックは、主にインスタントコーヒー・砂糖・クリーミングパウダーなどの各原料を混合してつくられる。

原材料倉庫と混合ルームの間にはシャッターとエアシャワーを挟み異物を徹底除去。

「万が一、微細な紙片がミキサーに入ってしまったら取り除くことができないため、厳重な管理をおこなっている」と語るのは榎並淑夫製造部長。

スティックの箱詰めを行うパラレルロボット - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
スティックの箱詰めを行うパラレルロボット

混合ルームでは、タンクに投入されたインスタントコーヒー、砂糖、クリーミングパウダーなどの各原料が、高性能のミキサーで均一性を保ちながら混合される。

スティックに求められる嗜好性の多様化には、少量の計測が可能な計量器で対応。

「スティックの種類によっては、グラム以下で計量しなければならない少量の原料を含むものもあり、少量の計測が可能な計量器で量っている」と説明する。

ミキサーで混ぜられた中身は、異物除去などが行われ、ふるい分けされてから充填包装される。

具体的には、大きなフィルムロールをカットし筒状にされた包材の上から混合された中身を投下し充填包装される。

AGF関東に展示される焙煎イメージ - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
AGF関東に展示される焙煎イメージ

スティックは中身を三方シールで充填包装して完成する。その際、シール部分に中身が挟まった“噛み込み”のスティックを除去するため1本ずつ検査を行っている。そのほか、1本ずつ重量を測定・記録し万が一に備えてトレーサビリティできるようになっている。

今では市場に浸透しているスティックの丸みを帯びた四角も、クレームゼロを目指して消費者のことを考えて編み出したものだという。

「四角が角ばったままでは、箱詰めしたときに、スティック同士で傷つけ合う恐れや、お客様が手を切ってしまう恐れがあるため、角に丸みを持たせるように改良した」と述べる。

スティックの箱詰めはパラレルロボットが行う。1箱の入数に合わせてスティックの数をカウントして、空気の力で吸いつけて振り分けている。7・8・10・18・22・27・30個入りのサイズチェンジも容易にできるという。

AGF関東に展示される「ちょっと贅沢な珈琲店 レギュラー・コーヒー」エリア向けシリーズ - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
AGF関東に展示される「ちょっと贅沢な珈琲店 レギュラー・コーヒー」エリア向けシリーズ

レギュラーコーヒーの製造ラインもニーズの多様化に対応し安全安心に取り組んでいる。

生豆受け入れは、トラックが建屋に乗り入れて荷台の後方からコンテナの中全体に入った大袋を切り裂いて生豆を投下するバルク式と麻袋を1袋ずつ開封するタイプの2つがある。

「最近では、嗜好性の多様化を受けて麻袋での取引も増えてきている。麻袋から生豆を取り出す作業は現在、自動化されている。以前は1袋ずつ人力で行いかなりの重労働だったが、今はロボットを使って運び麻袋を解体機で作業して投入している」と説明する。

AGF関東で温室栽培されるコーヒーノキ - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
AGF関東で温室栽培されるコーヒーノキ

精選工程では、まず、茎・皮・糸くずなどを除去し、粒形選別機で大きさを選別。その後、石取機(重量異物除去)、比重選別機(軽量異物除去)、金属探知機、マグネットを経ていく。

焙煎エリアでは、「T2ACMI(たくみ)焙煎」と称する熱風焙煎が行われている。

「たくみ焙煎」は、2012年に導入され、時間帯によって焙煎温度を変えてターゲットテイストに合わせたたくみな火加減で焙煎。その上で「焙煎によって起こる生豆の化学反応を細かくコントロールすることで、苦みや酸味のバランスを取りながら香りを最大化する」技術となる。

レギュラーコーヒーの充填包装ラインは、大袋タイプとパーソナルドリップに大別される。

コーヒーノキの花(4月28日撮影) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
コーヒーノキの花(4月28日撮影)

焙煎・粉砕後に炭酸ガスが発生することから、大袋タイプには酸素を取り込まず炭酸ガスを一方的に逃す9つの穴のワンウェイバルブを付けており、正しい位置に付けられているか1袋ずつ検査している。

また、パーソナルドリップタイプは充填包装時に発生する恐れがある“噛み込み”を、スティック同様に徹底した検査により除去する事で品質向上に取り組んでいる。

AGF全体のコーヒー豆の年間使用量は日本の総輸入量の1割強を使用していることになる。

AGF関東に展示される「ブレンディの森」のパネル - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
AGF関東に展示される「ブレンディの森」のパネル

AGF関東は、1996年に竣工(当時:味の素ゼネラルフーヅ㈱尾島工場)し、06年に分社化によって発足された。

敷地面積は東京ドーム1個分の約4万㎡。従業員数は4月1日現在で216人。立地は首都圏から半径100㎞圏内にあり消費地にアクセスしやすく、利根川を中心とした豊富な水源に恵まれている点も特長となっている。

AGFでは「ブレンディの森」と称して“森を守り水を育む”森づくり活動を継続して行っている。

倉庫機能は現在、隣接するF-LINE尾島物流センター(2019年4月から味の素物流から商号変更)に在庫を移管している。

物流の2024年問題については「まずはF-LINE様との協議のもと、包装資材の一回あたりに受ける量を多くして発注と運送頻度の削減に取り組むなど、一つひとつ取り組みを進めていく」(富樫社長)という。

今年5月8日からは3年ぶりにリアルでの工場見学が再開した - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
今年5月8日からは3年ぶりにリアルでの工場見学が再開した

そのほかAGFファンづくり活動として、コロナ禍の22年は太田市内の小学校への出張授業や太田市行政センターでの出張コーヒー教室、リモートでの工場見学などを実施。

今年5月8日からは3年ぶりにリアルでの工場見学が再開。AGF関東及びAGF鈴鹿どちらの工場見学もAGFのホームページ内の対象ページから申し込みが可能となっている。