家庭用チーズ市場 値上げ後の需要回復へ チーズを楽しむ提案強化 若年層の掘り起こしも課題

22年度の家庭用チーズ市場は、売上金額で前年並み、販売数量で8%程度のマイナスとなった。輸入原材料価格やエネルギーコストの上昇、円安などの影響を受け、大手メーカー各社は昨年4月と9-10月、さらには今年4月とこの1年で3度の価格改定(内容量変更含む)を実施したが、急激なコスト上昇に値上げが追い付かず、利益面で厳しい状況が続いている。コスト環境は依然厳しいが、メーカー各社はチーズの需要喚起につながる提案活動を強化し、市場の活性化に力を入れている。

輸入チーズの原材料価格は、年明けにオセアニアがトン当たり初の6千ドルを突破。その後は若干軟化したものの、現在も5千ドルを超える高い水準で推移している。

原材料高騰がピークだった昨年の下期からはやや落ちているが、為替もまた円安に振れており、エネルギーコストや物流コストの上昇に加え、「包装や副原料も値上がりが続いている」(大手乳業メーカー)とさらなるコストアップに警戒感を示す。

先行きのコスト環境は不透明な状況だが、喫緊の課題は3度目の値上げの浸透と、チーズの需要維持・回復が焦点となる。こうした中で、メーカー各社はチーズ市場の活性化に向けた提案活動に力を入れる。

これまでも各社がチーズの魅力や独自の価値を伝える施策を幅広く展開してきたが、「チーズの価値を伝え切れていない人はまだ多くいる」と口を揃える。チーズは家庭を持ってから購入する人の割合が高く、若年層の開拓が課題と見る向きもある。

「若い人もチーズを嫌いではないし、外食での広がりを考えると、家庭での喫食機会は広がりが期待できる」(大手メーカー)。こうした考えのもと、家庭でチーズを楽しむ様々なシーンやアイデアを提案している。

明治は若年層や主婦層をターゲットに、フライパン一つで豪華見え&満足感の高い「ワンパンカマン」を提案している。雪印メグミルクが提唱する「15分ガマンベール」は旨味の評価も高く、同社のカマンのおいしさを伝える。

六甲バターは30~40代女性を中心に好調のデザート6Pの提案を強化。単独での売場作りや、購買層が近いクリームチーズと一緒に並べるなどして売場活性化につなげる。

また、森永乳業が発売した「クラフト 強烈旨辛スライスチーズ5枚」や明治の「明治北海道十勝スライスチーズ 濃い味 7枚入り」も人気だ。好調要因について明治は「同じ値段だったら濃い味の方がお得と感じる方も一定数いると思う。ラーメン店で濃い味を頼むのと同じような心理かもしれない」という。

ミルク感や生乳の味わいがより感じられるなど、熟成度で味わいが変化するのもチーズの魅力の一つだ。雪印メグミルクではお酒だけではなく、お茶や珈琲と一緒に楽しむ提案なども行っている。チーズの伝わり切れていない魅力を掘り起こすとともに、新しい体験を通して今後もチーズの需要を創造していく構えだ。

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