東洋水産は、アメリカとメキシコの即席麺市場でトップシェアを快走する。前3月期の海外即席麺事業は売上高1千784億円、前年比56.1%増、営業利益261億円、同159.6%増と過去最高だった。かねてより増産投資を継続しながら物流の効率化や資材の共通化などでコストダウンを徹底し、近年のインフレ下でも他食品との相対的な割安感が強みになっている。同社は「一定の利益を確保した上で生活者が手に取りやすい価格帯を維持し、さらなる販売数量の拡大を目指す」と展望する。
海外比率、売上高41%・営業利益65%
1977年にカリフォルニアで現地生産を開始して以降、「MARUCHAN」ブランドで需要開拓を推進。袋麺は「Ramen」シリーズ、カップ麺は「Instant Lunch」シリーズを主力に展開する。現在はアメリカの西部にカリフォルニア第1工場、同第2工場、東部にバージニア工場、中南部にテキサス工場を構え、米国内への供給とメキシコなどへの輸出を行っている。22年、テキサス工場に第6ラインが稼働した。
同社全体の業績に占める海外即席麺事業の比率を見ると、前期は売上高で約41%(21年度約32%)、営業利益で約65%(同約34%)と貢献度がさらに高まった。急激なコスト上昇を背景に、2年間で3回の価格改定(21年10月、22年4月、22年10月)を実施し、合計でおおむね30%以上もの値上げとなったが、歴史的なインフレ下でインスタントラーメンの需要は高止まりだという。
「21年度はコストアップに値上げが追いつかず営業減益となったが、前年度後半からほぼ吸収できている。23年度は主原料の価格高騰がピークアウトし、過去最高だった前期を上回る利益となる見通し」(同社)。
24年3月通期の海外即席麺事業は、売上高1千995億円(前年比約12%増)、営業利益332億円(同約27%増)を計画している。
なお、業界データから東洋水産の国別シェアはアメリカで約65%、メキシコのカップ麺(市場構成比約90%)で約80%と推計。世界ラーメン協会(WINA)によると、22年1~12月の総需要はアメリカが51.5億食、メキシコは15.1億食となっている。
次世代への訴求を強化
アメリカ国内の需要は袋麺が約6割を占める。定番の「Ramen」シリーズは「Chicken」「Beef」などのフレーバーを中心に、近年は健康志向に配慮した減塩製品も品揃え。日本から輸出する「GOLD」は、「マルちゃん正麺」と同じノンフライ麺を使用する。カップ麺(構成比約4割)では、「Instant Lunch」シリーズの存在感が大きい。フレーバーは袋麺と同様に「Chicken」「Beef」が人気。近年は汁なしの「Yakisoba」シリーズ、どんぶり型の「BOWL」シリーズなど高価格帯に位置付ける商品群が拡大。辛口系など多様なフレーバーを展開し、ユーザーの裾野拡大に一役買っている。
メキシコではカップ麺が市場の約9割を占める。主力品「Instant Lunch」シリーズのうち、一番人気は現地の嗜好にあわせた「Camaron, Limon y Habanero」だ。また、値ごろ感がある袋麺の強化に注力。シェフによる「Ramen」シリーズを使ったレシピ提案なども発信し、市場への浸透を後押ししている。
一方、長期的な視点で次世代ユーザーへの訴求を強化している。これまでアメリカでは学生向けのサンプリング、メキシコでは試食イベントなどを継続してきたが、今後はSNSでの情報発信や環境に対応した紙カップ製品の拡販なども推進する。