コンビニスタッフの精神的な負担を軽減し店内には明るさ ファミリーマートが店舗メディア化に手応え

 ファミリーマートは7日、大型デジタルサイネージ「FamilyMartVision」を中核とする店舗メディア化の手応えを説明した。

 大手EC企業は拡大の一途をたどる一方、運送費高騰により利益を圧迫しているとみられる。
 ファミマの店舗メディア化は、コロナ禍で苦戦を強いられたリアル店舗がECに反転攻勢をかけるべく、リアル店舗がデジタルを取り込むことによって活性化を図るものとなる

 この日発表した細見研介社長は、店舗を「カスタマーリンクプラットフォーム」と再定義し「リアル店舗にデジタルを加えていかに顧客とつながっていくのかが本戦略の核心」と説明する。

 店舗メディア化の肝は、デジタルサイネージで広告枠に留まらず番組枠を持つ点にある。
 ファミリーマートと伊藤忠商事が2021年9月に設立した子会社のゲート・ワンがメディア事業を担い独自の番組を製作。番組枠を持つことで、来店客の注目率が上がり、注目率が上がることでメディアとしての価値を高めている。

 ゲート・ワンは、同じくファミマグループ会社のデータ・ワンと連携して店舗メディア化事業を展開。
 データ・ワンはデジタル広告事業を手掛け、小売業者間の購買データを活用したデジタル広告配信事業と広告代理店業を営み、20年の設立から実質2年で黒字化。検索データではなく購買データに基づくデータ分析を強みに業績を伸ばし、広告クライアント数は累計約150社に上る。

 購買履歴・購買データに紐づくIDを3000万以上保有していることから、広告を投下する際に、都内・20代女性・ビール購買履歴といった具合に細かくセグメントしても一定のボリュームを保つことができる。

 店舗メディア化では、広告枠の販売に加えて、デジタルサイネージなどを活用したプロモーションで店舗の販売増も見込む。

 「ファミチキ」で「コカ・コーラ」ブランド(コカ・コーラシステム)とのセット販売プロモーションを4月から5月にかけて実施し、デジタルサイネージ設置店舗と未設置店舗の併買率を比較したところ、設置店舗は未設置店舗の118%という実績を残した。

 顕著な効果がみられたのはクロスメディアの事例で、スマートフォンアプリ「ファミペイ」内のバナー広告とサイネージの両方に接触したグループの購買件数の上昇率は268%と最も高い数値を示した。

 その他の購買件数の上昇率は、店頭施策のみが197%、店頭施策と「ファミペイ」バナー広告への接触が226%。

 店舗メディア化の副次的効果については「会計をお待ちいただいているお客様がデジタルサイネージを見られることで、スタッフさんにあまり注意が向かわず、お客様のイライラも解消されて、スタッフさんの精神的な負担軽減につながっている。また大型デジタルサイネージがついていることで店内の雰囲気が非常に明るくなり皆さんに喜んでいただいている」と語る。

 ゲート・ワンの速水大剛COOは番組枠による集客効果を挙げる。

 「昨年6月にYouTubeで活躍している音楽アーティストとタイアップしてデジタルサイネージ用にオリジナル楽曲を書き下ろしていただいたところ来店客数の増加に大きく貢献した」と振り返る。

 現在、デジタルサイネージは4000店舗以上に設置され今年の末までに1万店舗へと設置拡大する。「1万店舗へと増やすことで、今はなかなかお応えできていない、より細かいエリアの出し分けやクリエイティブの出し分けが可能になる」という。