サントリー食品インターナショナルは「伊右衛門」ブランドの基幹アイテム「伊右衛門」本体(緑茶)で、最もおいしそうにみえる緑の水色(すいしょく)を追求している。
この姿勢は、2004年のブランド誕生以来、一度もブレたことがない一貫したものだと指摘するのは三宅克幸SBFジャパンブランド開発事業部課長。
「開発当初から目指していたのは、誰でも考えつくシンプルなコンセプトで、それは“最もおいしそうに見えて、最もおいしい緑茶飲料をつくる”ということ。コンセプトは一貫して変わらないが、一方でお客様の嗜好は変わりゆく。その中で、常に最良の中味、パッケージを追い続けており、今カギとなるのは緑の水色だと考えている」と語る。
20年から緑の水色を追求。
「茶色よりも緑色のほうが間違いなくおいしそうに見える。味わい、香りはもちろんのこと、20年に辿り着いた緑の水色もさらにパワーアップさせて、それを浸透させる活動に取り組んでいる」という。
昨年は、緑の水色に磨きをかけつつ“淹れたてのような緑はおいしい”ことをアピール。この取り組みが奏功したことに「伊右衛門 濃い味」の大幅増が後押しして、「伊右衛門」ブランド22年販売実績は前年比4%増の6170万ケースを記録した。
「今、緑茶飲料市場を取り巻く環境が特に昨年10月の価格改定以降、相当しんどい状況になっている。10月以降、PBの伸長が目覚ましく、悲しい現実ではあるが“緑茶飲料はどれも同じ”と思われているお客様もいらっしゃる。このような厳しい中で、市場並みに拡大できたのは1つの成果だと感じている」と振り返る。
23年販売計画は2%増の6280万ケース。この目標達成に向けて、今年は本体と伸び盛りの「濃い味」を注力アイテムと位置づける。
本体は、味や香り、緑の水色をさらにブラッシュアップさせた。
新しい中味技術開発を取り入れて水色をさらに清々しい緑へと進化。味わいは茶葉の配合や香り立ちを総合的に見直した。
具体的には「ただ緑色を追求することや、茶色と割り切ってお茶の味わいを追い求めることは、競合他社でもできることかと思うが、緑色でお茶らしい味わいをつくるのが技術的には難しい。今回、昨今のお客様の嗜好に合わせるべく、トップノートで火香(ひか)をより強く感じられるようにした」。
火香とは、茶葉に火入れして乾燥させる際に発生する香ばしい香り。火香強化の目標設定から逆算して、一番茶など使用する茶葉の種類や合組(ブレンド)を社内外で議論して磨きをかけた。
刷新した中味を、自信を持って伝えていくため、
パッケージも一新して新コミュニケーションを展開している。
パッケージはラベルの縦幅を短尺化。
「昨年よりもさらにラベルを小さくした。これは、水色をよりきれいな緑色に仕立てることができたという自信の表れ」と胸を張る。
その上で、メインの容量帯となる600mlサイズはこだわりの新ボトルへと大刷新。キラキラと光るレリーフで、つくり込まれた質の良さも訴求する。
「パッケージは、社内では綺羅(きら)ボトルと呼んでいる。お客様からは、“京都・嵐山の竹林のようだ”とか“枯山水の提案のようだ”といった感想が寄せられ、ポジティブな想像力をかき立てられたのではないかと思っている」と説明する。
コミュニケーションは、本木雅弘さんに加えて新キャストとして永野芽郁さんを起用した「二人の茶匠」篇を放映している。
同CMでもパッケージ同様に磨きをかけた緑の水色について胸を張って訴求すべく、「今こそ飲んでほしいお茶ができました。」「清々、堂々。清らかなる傑作」というナレーションとともに、出演する二人の自信あふれる表情を描いている。
キャストについては「本木さんに加え、永野さんにも新しい茶匠として入っていただくことで、伝統を引き継いで守りに入るのではなく、常に目線は前を向き、今の時代を取り込んでどう新しいお茶を作っていくのかを象徴的に伝える存在」とみている。
3月14日のリニューアル発売後の動きは上々という。
「非常に強い競合の定番ブランドに戦いを挑めるレベルにまで回復したが、リニューアルしてからまだ2ヵ月しか経っておらず本番はこれから」と気をひきしめる。
【写真】サントリー「伊右衛門」のCM「二人の茶匠」篇に出演する永野芽郁さん