営業制限が緩和された昨年、百貨店の売上高はおおむね前年を上回り推移した。だが、中元・歳暮においては多くの店舗が苦戦を強いられた。
コロナ禍当初は百貨店や大型SCが営業を自粛し、中元も厳しい商戦が予想された。しかし、実際には移動が制限されたため、会えない家族や知人に何かを贈るという新たな需要が生まれた。
帰省や旅行が戻った昨年はそれも減り、急伸したネット受注も反動で落ち着きを見せた。加えて秋以降は、本格化した食品の値上げが消費者の節約志向を強めた。ギフトの贈り先を絞ったり、年賀状をやめるのと同じ感覚で儀礼的な歳暮を終わりにしたりといった動きも見られた。
そして迎えた今年の中元商戦。この夏も商品の値上げが続き厳しい見通しは変わらない。その中で百貨店各社は買い得感の訴求や好調な自家需要の獲得などで市場の活性化を図ろうとしている。
近鉄百貨店は送料込みギフトをカタログの巻頭に配し、節約志向にアピールする。ジェイアール名古屋タカシマヤは一般の配送料金を春に値上げしたものの、中元の主力商材については全国一律の送料を維持する。
コロナ以前から伸長している自家需要品に注力する動きも目立つ。名古屋三越は自家需要向けの商品を昨年の歳暮期に比べ2倍に増やした。またパーティーなど人の集まる場面が増えたことに対し阪急百貨店は食器などの非食品を組み合わせた新たな企画を提案。岩田屋三越もこうした動きに「百貨店クオリティの商品を提案する」と意気込む。
このほかにも、冷食の拡大や個食ニーズの高まり、サステナブル志向など多様化する消費動向を捉えようと各社は様々な取り組みを進めている。これらによって中元・歳暮の縮小を抑制するだけでなく、通年での新たなギフト需要の獲得につなげられるかが問われる。