即席麺市場は、主要メーカー(一部除く)の価格改定に伴い、6月からNB製品の店頭売価が新値に順次切り替わっている。急激なコスト上昇を背景に昨年6月以来、2年連続の値上げとなる。今後、特売などのハイ&ロー政策をとるスーパーでは、新価格での販促強化で従前の売上を確保できるかが課題となってくる。一方、大手コンビニは今年もメーカーの希望小売価格に沿った新値に移行。PB強化との2本柱で挑む。足元ではドラッグストアの存在感が増しており、業態間のシェア動向も注目される。
6月初旬、都内の大手スーパーではチラシで袋麺「サッポロ一番 5個パック」が398円(税別、以下同)、カップ麺「マルちゃん 赤いきつねうどん」が128円で売り出された。改定前に比べ、おおむね前者は30~40円高、後者は10~20円高となった。他のスーパーでは、「カップヌードル」のレギュラーサイズをアイテム別で定番188円(改定前168円)、特売138円(同128円)と値付け。袋麺5個パックは定番棚で上限518円(同468円)、エンドのお買い得品で368~398円(同298~368円)などとした。
即席麺業界には誰もが知るロングセラーのNBが数多くある。メーカーはそのブランド力を商品リニューアルやテレビCMなどのプロモーション施策でさらに磨く。流通サイドは定番棚での指名買いを想定しつつ、月間や日替わりの特売で価格にメリハリをつけたいところ。今後は両者で新たな値ごろ感を定着させられるかがポイントになる。
大手コンビニ3社は6月5日から順次、NBのカップ麺はレギュラーで税別235~236円、大盛・ビッグで同270~271円とした。PBの定番はレギュラーが同137~139円、大盛・ビッグが184~188円などで展開。200円台前半でお得感ある有名ラーメン店とのコラボ商品もラインアップする。昨年来、PBは値ごろ感が支持されて急伸し、存在感を高めた。
「NB・PBとも売り場の柱となる強い定番商品をしっかりと売っていきたい」(コンビニ商品担当)。
一方、近年はドラッグストアの台頭やコロナ禍の影響で業態間のシェアが変動している。インテージSRI+データで見ると、22年度(4~3月)のカップ麺販売食数の構成比はスーパーが57.5%(18年度57.2%)、コンビニが23.6%(同26.6%)、ドラッグストアが16.9%(同13.9%)、ホームセンターが1.9%(同2.3%)となっている。
インテージ市場アナリストの木地利光氏は「カップ麺の業態別販売動向をみると、ドラッグストアの22年度対18年度比は金額で29.7%増、食数で14.4%増と大きく伸長。ドラッグストアの平均食数単価は他業態より低く、お買い得感があることが好調要因として挙げられる。コロナ禍でマスクや消毒剤などとまとめて買える利便性の高さも支持されたと推察」と解説する。
即席麺は、ニーズの多様化や複数回にわたる価格改定を背景に、業態ごとの商品構成や価格帯が複雑化している。物価高の中でコスパを強みに底堅い需要が見込める一方、メーカーや流通関係者は消費動向にあわせた難しいかじ取りを迫られている。