味の素の藤江太郎社長は5月11日、2023年3月期の決算発表における「企業価値の向上に向けた取組み」発表の中で昨年度を振り返り、「激変の環境の中で昨年度はヘルスケア等事業の飛躍的成長が味の素グループを牽引し、弛まぬ打ち返し努力を続けてきた食品事業が増益に回復した。食品とアミノサイエンス、BtoCとBtoBのそれぞれに強みを持つ、味の素グループのユニークなポートフォリオがドライバーとなったと確信している。構造改革から1年前倒しで成長のステージに入ったが、今後も4つの成長領域(ヘルスケア、ICT、フード&ウエルネス、グリーン)にフォーカスしポートフォリオの強化・シフトを続けていく」と述べた。
今期のマーケティング高度化に向けた取り組みの柱は4月1日付で設立した「マーケティングデザインセンター」。センター長には岡本達也執行役常務食品事業本部副事業本部長が就任した。
この中で藤江社長は、「最近の食品市場では大きなヒット商品は出ていないが、岡本は食品、冷凍食品でヒット商品を連発してきた優秀なマーケッター。味の素はもともとマーケティングと技術の両輪に優れ、特にマーケティングの巧みさが評価されてきた」と指摘。
一方で「10億円を超えるような筋のいい新製品はあまり発売されなく、その原因は何かを深く掘り下げた。製品開発には研究所や生活者情報からアイデアを吸い出し、道をつくるところまでは上手い。だが、そのアイデアを具体的な製品にすると、筋が悪く出目が悪い。真面目に考え過ぎており、時代にも合っていない」とし、「マーケティングデザインセンターを通して筋のいい、出目のいい新製品を作ろうと思う。分かりやすく言うと、検討に検討を重ねて発売するのではなく、思い切って挑戦し、しかも開発のスピードを速める」と言う。そこでセンターを通して「1年に複数の売上高二ケタ億円規模以上の新領域新製品」の創出を目指す考えだ。