代々木ゼミナール(代ゼミ)はキーコーヒーとコラボしたコーヒーの映像講座を制作し、3月から販売している。
人生100年時代が喧伝される中、代ゼミ講師を核とした伝え方のノウハウを活用して、受験生以外の幅広い層を対象に、リカレント(回帰教育)やリスキリング(新たなスキル習得)の機会を提供していくのが狙い。
映像講座は「植物としてのコーヒー」(生物)「コーヒーは世界にどう広まった」(世界史)「コーヒーはどこからやってくる」(地理)といったテーマで代ゼミ講師が語るものと、コーヒーの飲み方・いれ方などキーコーヒーが担当するパートに大別され、計12回分(各回約15分)で構成されている。
販売開始以降の初動は上々で「ありがたいことに大変好調で想定以上の反響をいただいている」と胸をなでおろすのは、映像講座の旗振り役をつとめる代ゼミの松本拓也さん。
松本さんの所属する教育事業開発部では、キャリア教育と大学支援の2本柱で事業領域の拡大に取り組んでいる。
キャリア教育の一環として、これまで250程度のテーマを扱ってきた中で、松本さんが今回、コーヒーに着目したのは、一冊の本「コーヒーの科学」(ブルーバックス・旦部幸博著)との出会いだった。
「私自身、もともとコーヒーが好きで、コロナ禍に、もっと深く知りたいと本を読むようになった。その中でコーヒーはただの飲み物・食品ではなく、生物・化学・世界史・地理といった科目が横断的に結びついていることに気がつき、ぜひ講座にしたいと企画を立ち上げた」と振り返る。
相談を受けた上長は「コーヒーは生活に密着した食品の1つであるので、とにかく楽しいと思ってもらえる内容にすることを唯一の条件として出した」と語る。
楽しめるコンテンツの1つとしてコーヒーのいれ方などが候補に挙がり、白羽の矢が立てられたのがキーコーヒー。
松本さんの提案を最初に受けたキーコーヒー広報チームの小山泰知さんは「弊社は“誰でも、簡単に、おいしく”をテーマに100年間活動してきた。次の100年はコーヒーの“楽しさや興味深さ“を広めたいと考えており、弊社の想いと合致したことに加えて、キーコーヒーは若年層からの認知が低いという課題もあったため逆に有難いご提案をいただいた」と感謝の意を表する。
両社協議を重ねて編み出された映像講座の中で、代ゼミ講師担当パートは、コーヒーメーカーの小山さんにとっても目からうろこが落ちるような内容だという。
「今までになかった切り口で、コーヒーはかくも面白いものなのかと思い直した。初めて知ることが多く、コーヒーの魅力、奥深さを改めて実感した」(小山さん)と述べる。
代ゼミ講師の特徴について松本さんは「難しいテーマであっても、噛み砕いてわかりやすく伝えることができる。例えば大学の教授は専門的に詳しい話はできるが、聞き手にもある程度知識が求められる。高校の先生は丁寧な授業をされるが、そこでパーフォーマンスは重要視されない」と説明する。
代ゼミ講師がコーヒーの映像講座を担当するにあたり、講師自らもがコーヒーについて学ぶ必要があるのでは、と疑問が浮かぶ。
この疑問に対しては「講師はコーヒーの専門家ではないが、例えばコーヒーの焙煎を化学変化と捉えれば通常授業の延長として教えることができる。世界史や生物も同様で、コーヒーだけにフォーカスして講義をするイメージ」と回答する松本さん。
リカレントやリスキリングの機会提供以外には、「総合的な探求の時間」(2021年度までは「総合的な学習の時間」)のテーマとして「コーヒー」や「コーヒーとSDGs」が取り上げられる可能性にも着目する。
松本さんは「大学入試や高校の授業においても、科目横断的なものの捉え方や、探究の考え方が求められている。自ら課題を発見し解決までの道筋を検討する題材として、身近な存在であり、高校教科との結びつきが強く、そして社会問題を学ぶ入り口にもなるコーヒーは取り扱いやすいテーマだと考える」との見方を示す。
5月20日には映像講座へのトライアルを目的としたリアルイベントとして「世界を動かしたコーヒーの歴史」(約40分)と「ブレンドコーヒーを作ってみよう!」(約80分)の二本立ての企画を予定している。
事業領域の拡大を進める代ゼミ。キーコーヒーとしても若年層の取り込みで新境地を開く可能性がある。
小山さんは「代ゼミさまの全国各拠点でのリアルイベントや、受験生向けのブレンドコーヒーの開発など、様々な可能性を検討している。学生や若年層とのタッチポイントを増やしてブランドを浸透させていきたい」と期待を寄せる。