ごま 新たな価値提案で市場活性化 ボリュームゾーンは適正価格化を 真誠 冨田博之社長

原料をはじめ輸送費や包装資材などの高騰、人件費の増加などあらゆるコストアップにあえぐ食品産業。国内消費の99.9%を輸入に頼るごま業界は、より厳しい環境に置かれている。

昨22年のごま原料輸入量は約18万t。数量ベースでは前年比18.6%増だが、金額ベースでは同62.0%増と大きく跳ね上がった。今年1~2月累計数字も、数量ベースは前年同期比15.7%減である一方、金額ベースでは11.4%増とその厳しさがうかがえる。

こうした中、ごま業界でも価格改定の動きが本格化。企業によってはすでに数度の値上げが実施されているが、「価格競争の激しいカテゴリーだけに店頭における適正価格化に加え、新たな価値提案を図れる利益商材の開発・育成が重要」と業界大手・真誠の冨田社長は訴える。

「当社の前12月期業績は増収減益。売上高は価格改定を行ったこともあり前年比4.6%増としたものの、円安をはじめ世界的な政情不安に伴う様々なコスト高騰が響いた。原料価格自体は当社が見込んだ水準で推移。在庫分も含めて、想定より利益が出たというところ。その分、今期が厳しくなるとの見通し」(冨田社長)だという。

価格については、昨年4月の業務用、11月の家庭用製品に続いて、今年2月にも業務用ごま製品、きな粉製品などの値上げを決断。しかしながら、消費者のごまに対する安さへのニーズは根強い。

「当社製品で言えば、60gで店頭売価100円弱というのがボリュームゾーン。この価格をキープするにはいよいよ容量ダウンが必要との声も社内であったが、それをやったら過去の繰り返しになる。そのため60gに関してはしっかり値上げしつつ、45gサイズを投入しリスクヘッジを図った。やはり45gにもそこそこ注文が来ている」。

それだけに、価格競争とは一線を画す、付加価値訴求型新商品群の投入・育成にもここ数年注力してきた。機能性表示食品の「だし香る ごま和えの素」や「プレミアム香ばし金のごま塩」には確かな手応え。「クラッシュアーモンドすりごま」や「大豆とアーモンドが入ったサクサク旨ごま」も好評だ。今春も、同社にとって3品目となる機能性表示食品「黒ごまアーモンドきなこ」や、地元高校生と共同開発した「ちょきなこはっちー」の2品を発売している。

「今のコスト上昇に合わせた価格の適正化、マーケットに合ったボリュームゾーンをどうするかが大きなカギ。品揃えの幅や総合力を生かして、各価格帯で好循環を生むようにしていきたい」。

今年の重点施策は

①新製品・新素材の付加価値創出
②販路拡大
③輸出強化
④業務用BtoB⑤SDGsの本格化

など。

新素材では、「ちょきなこはっちー」で使ったきなこフレークに注目。販路拡大については、スーパーやドラッグストアなどのほか、道の駅や土産品、ECでの展開を視野に置く。輸出については、昨年ハラル認証を取得した。

SDGsについては21年に専門部署を設置。昨年は「SDGs宣言」の制定や「SDGsレポート」の発刊など歩を進めた。「SDGs活動を通してモチベーションを高めるのは素晴らしいこと。それが最終的には仕事につながるということをしっかり自覚し、社員がプライドを持って働けるようにしていきたい」。

 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)