伊藤園は春夏シーズン、「お~いお茶」で20代若年層の獲得に向けてマーケティング活動を加速していく。
若年層に注目し、将来に向けて次世代ユーザーを開拓していくのが狙い。
安田哲也緑茶ブランドマネジャーは「お~いお茶」の現状について「かつてメインユーザーは30代以上だったが、今は40代以上になっている。20、30代も少しずつ増えているものの若年層の開拓が急務」と、課題意識を持つ。
「お~いお茶」は昨年、飲料基幹アイテム4品「緑茶」(本体)「濃い茶」「ほうじ茶」「玄米茶」の525mlを600mlに増量し価格を据え置き3月から順次販売したところ5月頃まで大きな伸びをみせ、その際に若年層の流入もみられたという。
そのほか新たな動きとしては、280mlPETと350mlPETが女性層やシニア層を中心に支持を集め大幅に拡大した。
今年は、徐々に流入してきている若年層への販路拡大を加速させる。
1月、若年層開拓・第1弾として開始したのが、「お~いお茶」桜パッケージで、今年は新たに世界的テキスタイルデザイナーの鈴木マサル氏のデザインを採用。「伝統的な春の象徴である桜のイラストを若年層目線のパッケージに変更した」。
今年摘み採った新茶を使用した2023年度品質の「お~いお茶」が発売される。
「野菜と同じく茶葉の品質はその年によって異なるため、その年の品質に合わせて調整していく。寒暖差があると茶葉の品質がよくなる。今年の新茶は冬が寒かったため、高品質な茶葉が期待できる」と語る。
「お~いお茶」から若年層向けの新商品を予定しているほか、毎年展開している「お~いお茶 新茶」でも若年層へのアプローチを強めていく。
「お~いお茶」ブランド以外からも若年層の獲得に向けて商品を積極的に投入していく。第2弾として2月には、桜が香る緑茶飲料として「さくら緑茶」を数量限定発売した。
同商品は、桜葉を抽出して緑茶とブレンドし、桜の香りと緑茶によるほのかな渋みのある味わいが楽しめる緑茶飲料で、パッケージには商品名を記載せずにシンプルな桜のデザインをあしらい、短冊の首掛けに商品名を表記。短冊の裏面はおみくじになっている。手応えは上々で「狙い通り若年層の興味関心をひくことができた」という。
第3弾として4月3日には日本茶ベースの新しいフルーツティー「晴れのち曇り時々お茶」を新発売した。
同商品はフルーツの爽やかな味わいの中に清涼感のある緑茶やほうじ茶の優しい焙煎香がふわっと香る、新感覚のご褒美フルーツティー(清涼飲料水)だが、若年層向けのコミュニケーションプラットフォームを用意して「お茶の世界を楽しんでいただく」ことを目的に展開していく。
味づくりの原点である茶畑の取り組みの伝達も若年層への浸透を考えて工夫を施し、新たな取り組みとして茶畑体験会を予定する。
「ドリンク工場が近くにある茶畑で体験していただき、畑からドリンクになるまでの過程を知っていただく。インフルエンサーにも参加していただきSNSで発信していただけるような内容を考えている」と語る。
キャンペーンについては「興味を持って手に取っていただき、継続して飲んでいただける内容を予定している」。
秋以降はシニア層もターゲットに入れてカテキン訴求商品を強化していく。
カテキン訴求商品で伸び盛りなのが「お~いお茶 濃い茶」で、今年1月末時点で販売数量41ヶ月連続伸長を記録している。
同商品は、緑茶の主要成分であるカテキンがインフルエンザ対策としてテレビ番組に取り上げられたことを契機に18年末頃から上昇基調にあり、これに拍車をかけたのが機能性表示食品としての打ち出しであった。
19年にガレート型カテキンの働きで体脂肪を減らす機能があることが報告されている機能性表示食品へと刷新して以降、勢いを加速。新規ユーザーを獲得しながら毎月前年を上回って推移している。
その一番の要因は「おいしさにある」との見方を示す。
昨年10月の価格改定後も影響を受けることなく伸ばし続け、乳性飲料を含めた機能性表示食品の飲料の中でトップの座を堅持している。
価格改定の影響をあまり受けていないのは「お~いお茶」全般にも当てはまり、これには「市場全体で値上げ基調にある中、トップブランドに支持が集中する傾向にある」との仮説を立てている。
カテキン訴求商品の第2の柱としては、昨年、「お~いお茶」ブランドの傘に入れて刷新した「2つの働き カテキン緑茶」も強化していく。
「お~いお茶」の販売数量は通期(22年5月~23年4月)、過去最高の販売数量に達するとみている。
この中で「濃い茶」は3000万ケースを突破した2021年度実績をさらに上回る販売数量を見込む。
「来期は525mlを600mlに増量して大きく伸ばした反動も予想されるが、緑茶飲料市場も過去最大規模に向けて拡大基調にあり、市場を牽引すべく積極的に活動していく」と意欲をのぞかせる。