強いニッポンハムを取り戻す V字回復と新段階への道筋両輪で 井川伸久社長

日本ハムの23年度が新体制で始動した。グループ2万8千人のトップに4月1日付で就いた井川伸久新社長は「非常に危機感をもってスタートした」とまずは述べた。原材料やエネルギーなどのコスト高騰が続き、業績は「想定以上の落ち込み。今までのビジネスモデルでは立ち行かないとはっきりした」と振り返った。「強みを伸ばす」「次世代商品開発」「サステナビリティ」などで様々な改革を断行し、「新しいステージに向けて、強いニッポンハムグループを取り戻すことが私の使命」と決意を述べた。

方針の基本はグループビジョン2030「たんぱく質をもっと自由に。」で、「30年までは不変」とする。ただ、掲げた21年当時とは大きく環境が変わり、今期は中計2023の最終年度。中計2026は「今年1年かけて修正」しながらさまざまな改革に着手する。

当面の課題に「業績のV字回復」を挙げ、「(今までの仕組みではない)次のステージへの道筋を作る」の「両輪で推進」していく。

まずは「強みを伸ばす」を全社員で共有した。加工では「シャウエッセン」「中華名菜」「石窯工房」など。食肉では国産鶏肉「桜姫」や国産豚肉「麦小町」などがある。特に食肉は自社ブランド販売を強化し、消費者の「認知度向上」に努める。

一方で、「次世代の(ブランド・商品の)核を作るのが今年の大きなテーマ」。加工事業では、営業と製造の中間に位置する「マーケティング統括部」を今期から新設した。「今までは営業側に販促、製造側に商品開発があり、役割分担していた」が、これを同統括部を中心に商品戦略を徹底していく。

また、主力商品群の一つ「ハム・ソーセージ」は、市場規模は大きいが伸びが鈍化しているウインナーやロースハムではない「別カテゴリーを作るよう指示している」とした。その形の一つとして今春、米国の朝食の定番「リンクス」をイメージした商品「モーニングサーブ」を、朝食のマンネリ感を打破する新定番として復刻発売し、好スタートを切っている。

グループ戦略では、「グループ戦略推進事業部」を新設した。取り組んできた営業・物流改革プロジェクトをDXを含めて具現化していく。DXについては「コスト削減が目的ではなく、DXで新しい事業をどう創出していくか」を基本に取り組む。グループの適材適所を強化し、物流改革では食肉と加工品それぞれで配送しているトラックの集約などに取り組んでいく。

また、北海道日本ハムファイターズの新球場を含む「HOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE」が3月に始動した。施設内飲食では「シャウエッセンホットドッグ」などが大人気で、同商品の市販化も検討していく。

井川社長は現在の厳しい経営環境に際し、大社義規創業者が残している言葉「逆境こそ、わが道なり」を紹介し「創業者もいろんな荒波を乗り越えて今の1兆2千億円規模の企業にされた。原点に戻り、私もこの言葉を使わせていただきたい」と話し、現在の荒波の先を見据えた。