家庭用レギュラーコーヒー市場は、値ごろ感のある大容量のコモデティ商品が支持を集める一方、高単価のプレミアム商品の伸びも顕著となっている。
特に豆商品が伸びたと指摘するのは、UCC上島珈琲の伊藤佳世マーケティング本部嗜好品マーケティング部部長。
「豆カテゴリーが他のカテゴリーと比べて、高品質なものが多い上にかなり伸びている。レギュラーコーヒー粉のプレミアム商品も一気に伸びてきているのも金額成長にかなり貢献した。見事な二極化が起こっており、大容量・低価格のコモデティ商品も伸びる一方、プレミアム商品は豆・粉・ワンドリップ(ドリップコーヒー)で構成比が高まっている」と語る。
プレミアム商品が伸びている背景としては、コロナ前に喫茶店やカフェで本格コーヒーを飲んでいた層の流入を挙げる。
「在宅ワークが増えて、これまでカフェチェーンなどで飲んでいた層が、お家での贅沢やご褒美として、高品質なコーヒーを飲みたいニーズが増えている」とみている。
キーコーヒーでは、高付加価値商品の「トアルコ トラジャ」を使用したレギュラーコーヒーが順調に推移。近年の傾向としては、コロナ禍で在宅時間をより充実させたいニーズが高まったことで30‐40代の新規ユーザーを獲得している。
この動きについて、小笹明子マーケティング本部R&Dグループ設計第一チームリーダーは「外出自粛でコーヒーの購入場所が限られた中で、スーパー・量販店の売場で、若年層かから在宅時間を充実させるためのコーヒーとして選ばれたと思っている。これまで高単価商品は50代以上の方をターゲットにしてきたが、若年層にも興味を持っていただけるということが十分に分かったため、既存のロイヤルユーザーを最優先としながらも、このような機械を逃さず、若年層にも積極的にアプローチをしていきたい」と述べる。
豆の比率が高いのが特長で「家庭用市場は豆と粉の比率が1対9と粉が圧倒的に多いのに対し『トラジャブレンドシリーズ』に関しては豆が1に対して粉が2と、豆の販売構成比が高く、本格志向のユーザーに支えられている」と説明する。
小川珈琲も豆などの高付加価値商品への引き合いが強まる。
同社は昨年、販売金額・販売数量ともに市場推移を上回って着地。牽引役は期間限定コーヒーで、「春」「夏」「秋」「冬」の季節を表現したパッケージデザインが支持され22年9月―23年1月の期間も引き続き2ケタ増で推移している。
豆商品も2ケタ増を維持。村上祐一総合開発部長は。「コーヒーの飲まれ方や求める価値が多様化していることは豆商品の拡大からも見て取れる」と語る。
村上部長は今後の市場について、新興ブランドの存在にも注視していく。
「昨年3月から8月までの期間、スーパー・量販店の家庭用レギュラーコーヒー市場は6%増とみられる中、当社を含めた上位5社の伸びをならすと前年同水準と推定され、新規参入を含めて上位5社以外のところが伸びてきている」と分析する。
コーヒーに限らず食品全体でメリハリ消費が進行していると指摘するのは、ネスレ日本の高岡二郎飲料事業本部レギュラーソリュブルコーヒー&システムギフトボックスビジネス部部長。
「サステナビリティへの意識や健康志向、さらに節約意識は当然高まっていると思っている。一方、外出の魅力というものも再認識され、価値があると思ったことには時間やお金をかける傾向がみられる」と続ける。
味の素AGFは「レギュラーコーヒー飲用者の中でも豆の種類や品質、焙煎、挽きたての鮮度を重視し、コーヒーへのこだわりをさらに追求したいといったニーズが拡大しており、焙煎豆の販売も通販を中心に好調に拡大している」との見方を示し、3月15日に「ちょっと贅沢な珈琲店」レギュラー・コーヒーシリーズから2品種の焙煎豆タイプを通販限定で発売開始した。
インテージSRI+データによると、レギュラーコーヒー市場の22年販売金額は前年比8.8%増の626億円を記録した。
サブカテゴリーで大きく伸長したのが豆とドリップコーヒーで、袋(豆)が15.7%増の30億円、ドリップコーヒーなどの個包装が10.3%増の268億円となった。
この動きについて、インテージ市場アナリストの木地利光氏は「袋(豆)、個包装(ドリップ等)の両者とも、特に好調なのが、専門店のブランドなど高価格・高品質を訴求する商品。コロナ禍で、在宅時間が増える中、家庭でも本格的なコーヒーを楽しみたいという需要が高まっている」と解説する。