レモンサワーの「次」に、アサヒビールが本気で挑む。RTDでは後発となるポジションを逆手に、これまでとは一味違う商品と戦略で市場に変革を巻き起こす。
「残念ながら現在の私たちは、RTD事業において確固たる地位を築けていない。市場を席巻する強いブランドも持っていない」。10日の発表会でアサヒビールの松山一雄専務が述べた。
巨大ブランド「スーパードライ」を擁するビール事業では横綱相撲を展開する同社も、RTDに関しては他社の後塵を拝してきたことは否めない。
このほど掲げた「アサヒRTDイノベーション2025」では、RTD事業で25年までに22年比1.5倍以上となる600億円の売上を目指す。松山氏にとって、マーケティング本部長として最後の、そして16日から就任の社長として最初の大仕事だ。
酒税改正で増税となる新ジャンルからの需要流入もあり今後も順調な成長が予測されるRTDだが、市場拡大を牽引してきたレモンフレーバーの伸びが頭打ちに。「NEXTレモンサワー」が期待されているとみる。
同社が王者の地位を築くビールと異なり、RTDでは「チャレンジャー」の戦略が必要と松山氏は語る。単年度で一気呵成に仕掛けるビールのやり方から離れ、多様な人材を活用した全社横断型プロジェクトのもとで腰を据えて取り組む。
第1弾として、顧客の情緒的価値を中心に据えた4ブランドを発売。各ブランドと親和性が見込まれるエリア限定で展開し、消費者の反応を見極めて全国展開につなげる計画だ。
甘くないものを好む大人に向けたジンベースの無糖柑橘サワー「GINON(ジノン)」(東北)、遊び心ある三つのレシピを取り入れたグレープフルーツサワー「グレフルマニア」(九州)、隠し味にみりんを使用したまろやかなレモンチューハイ「まろハイ」(中四国)、担当者が実際に飲み歩き“横丁らしい味”を追求したという「横丁ダルマサワー」(東海・北陸)。22日以降、7月にかけて順次発売する。
いずれも、これまで同社にはなかったタイプの商品。ジンベースのRTDとして先行する「翠ジンソーダ缶」(サントリー)、昨年に初のグレフル専門ブランドとして登場した「三ツ星グレフルサワー」(サッポロビール)などの競合製品とともに、レモン系で飽和する売場に新風を呼び込む。
「世界一わくわくするビール会社」をビジョンに掲げる松山氏。「RTDでは、お客様をわくわくさせられるようなものができていなかった」との反省も語る。「スーパードライ 生ジョッキ缶」で採用した独自のフルオープン缶による高単価RTDも画策中という。今後、さらにわくわくさせてくれそうだ。