昨年に「アサヒスーパードライ」を発売から36年にして初めてフルリニューアルしたアサヒビール。今秋に予定される酒税改正第2弾で加速が期待される「ビール回帰」の流れもつかみ、23年もビール市場を牽引する構えだ。
「新型コロナとの共存が3年目を迎えた昨年は社会経済活動の正常化が進んだ一方、急激な円安により日本経済が大きな影響を受けた。将来予測が困難な時代だからこそ変化の兆しを見逃さず、培ってきた技術を生かしてお客様の日常が明るくなる価値を創出。日本を元気にしていきたい」。アサヒビールの塩澤賢一社長は6日の会見で、今年の方針を表明した。
同社によれば、昨年のビール類市場は業務用の回復や価格改定もあり、18年ぶりにプラス着地した見込み。昨年に全面刷新した「スーパードライ」(SD)と、復活発売し販売好調な「アサヒ生ビール」(通称マルエフ)の2ブランドを柱に、今年もビール市場の拡大をリードする。
とりわけSDは、昨春の刷新後に単月購入者数が10年ぶりの2千万人超えを記録。生産体制を強化した「スーパードライ生ジョッキ缶」の急成長もあり、ブランドトータルの販売数量は13%増と二ケタの拡大を果たした。「辛口」の特徴はそのままに飲みごたえをアップさせるため中味の処方変更にまで踏み込む、リスクを背負った決断が成功した。
26年のビール類酒税一本化へ向け、今秋には2回目の酒税率改定が実施される。ビール減税でビール回帰の流れが加速する一方、増税となる新ジャンルは引き続き減少する見通し。物価高による節約志向の高まりもあり、ビール類市場全体では3~4%の縮小を見込む。
今年のラグビーW杯フランス大会では、同社がアジア企業初のワールド・ワイド・パートナーとして参画。SDが大会オフィシャルビールに選ばれた。
「世界3大スポーツの一つであるラグビーはビールとの親和性が高く、観客は試合中も試合後もビールを楽しむ。ラグビーをグローバルにサポートするブランドということを全面的に押し出していく」(専務取締役マーケティング本部長・松山一雄氏)。
さらにマルエフと同「黒生」の2品では、新サイズの250㎖缶を発売。ハーフ&ハーフなど多彩な飲み方を提案するほか、中瓶も発売し業務用と家庭用の連動を強化。またセブン-イレブンで昨年から販売中の「ホワイトビール」「ヨルビール」など、従来の食中シーンなどとは異なる需要を狙う商品で若年層の支持獲得にも取り組む。