食の価値観を啓蒙する年へ オール食品産業で一致団結

コロナ禍3年の負の因子払拭 まずは適正価格の実現から

2023年の食品業界が幕を開けた。コロナ禍が始まった2020年以降、パンデミック、ウクライナ戦争と大きな社会変化が続いた。その中で改めて浮き彫りになったのは日本経済の脆弱さであり、食品自給率の低さであり、インバウンド需要の重要性だった。これらの浮き彫りになった課題は今年、粛々と対応が進められてゆくことになる。

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食品業界においては、パンデミック下での新しい生活様式、新しい常識が浸透し、パラダイムシフトが進んだ。これに加えウクライナ戦争による石油石炭などエネルギーの高騰、食品原料の高騰、為替では円安と、商環境はさらに悪化した。その中でサプライチェーンの混乱や地政学リスクなどが改めて顕在化しており、生産者、メーカー、卸売業、小売業のオール食品業は、環境対応した新たな経営戦略の練り直しを進めている。

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年初以降、足元の国内経済は、生活者が緩やかに以前の生活行動に回帰する中で、食品の需要も外食産業の回復とともに好転していくと思われるが、食品原料とエネルギー高、円安の三つはいずれもスタグフレーションを継続させ回復速度を遅めることになる。いずれにせよ、昨年業界を悩ませた負の因子が、今年こそは終息に向かうことを願ってやまない。

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ただし、環境の変化に身を委ねて対応することに終始するのではなく、自ら環境を変容させる努力も必要だ。昨年は小売業の食品SM、DgSともに営業利益率の大幅な低下が顕在化した。食品SMを凌駕する新規出店ペースだったDgS、ディスカウンターは人材不足から店舗運営が出店ペースに追いつかず、いずれも想定していた業績結果を残せていない。メーカーは原料高騰分をすべて売価に転嫁できるわけではない。2月以降は価格改定が目白押しだが、改定価格が実際に店頭で反映されるまでのタイムラグをいかに短縮するかが鍵を握る。ここまで、どのプレーヤーも身を削り、粗利を削って事業を進めてきた。為替については今年下期以降は落ち着きをみせる、との予測が一般的だが、当面は消費者の節約志向がますます強まる。利益を度外視していつものように押し問答している状況ではない。商品、サービスそれぞれで、価格以外での付加価値をどう確立し浸透させるかが全業態で求められるだろう。

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また一昨年以降定着した環境経営、DXなどのイノベーションはさらに進化し、VX(Virtual Transformation)、GX(Green Transformation)、SX(Sustainability Transformation)などに発展しようとしている。地球環境の保全を念頭においた経営が求められているが、現状の課題解決は前述した通り、決してスピード解決できるものではなくなっている。この3年で生じた負の因子をいかに正の因子に転換させるかは、適正価格の実現がまず鍵を握っている。

EU農産品  - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)