日本酒輸出レポート① 白鶴酒造 「Made in Japan」貫き市場開拓 輸出の9割は専用商品

白鶴酒造は、日本酒の輸出数量で国内トップを誇る。現地の嗜好にあわせた酒質やデザインを積極的に開発し、輸出のうち約9割を海外専用商品として展開。主力品に育った「純米にごり酒 さゆり」の拡売や、「白鶴錦 純米大吟醸」によるブランディングなどに取り組んでいる。海外事業部長を務める松永將義取締役に基本方針や直近の動向を聞いた。

国内外拠点で営業展開

同社が清酒を初めて輸出したのは1900年のパリ万博までさかのぼる。また戦前には日本統治下にあった海外の領土に複数の製造拠点を構えていたという。終戦後は国内からの輸出に特化。80年代に入り同業大手はアメリカで現地生産を活発化させたが、白鶴酒造は日本からの輸出にこだわった。背景には先代社長だった嘉納秀郎氏(故人)の想いがある。「ワインの世界がそうであるように当社が製造する日本酒は『Made in Japan』であるべき」との信念を持っていた。現在もその姿勢を貫き、白鶴ブランドの海外展開は輸出に特化する。

近年は50か国以上に出荷。国・地域別の構成比は、アメリカが30%超でトップ、2位は中国が僅差で続く。販売体制はエリアごとに各国の拠点を活用。日本本社が国内免税品およびアジア・オセアニア地域、「HAKUTSURU SAKE OF AMERICA,INC.」(2005年ロサンゼルスに設立)が北中南米地域、「Hakutsuru Sake of Europe Ltd.」(19年ロンドンに設立)がEMEA地域(欧州・中東・アフリカ)をカバーする。なお、日本から出向する形でロサンゼルスに3人、ロンドンに1人の駐在員を置く。またアメリカでは11年に子会社化した「SAKEONE CORPORATION」を現地代理店とした市場開拓にも力を入れる。

神戸ビーフ専用酒が登場!

「白鶴錦 純米大吟醸」(白鶴酒造) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「白鶴錦 純米大吟醸」(白鶴酒造)

酒類トータル(リキュール等含む)の年間の輸出売上高は約25億円。うち清酒は7割超を占める。22年上期の清酒輸出実績は、数量ベースで前年比約10%増、金額ベースで同約20%増。円安がプラス要因となっているが、需要は引き続き拡大傾向にある。

商品別の動向をみると、主要国では「純米にごり酒 さゆり」が売れ筋として定着。ブルーボトルで高級感ある「翔雲 純米大吟醸」も存在感が大きい。松永取締役は「まずは受け入れられやすい商品で日本酒を体験していただき、徐々に本格的な味わいも楽しんでいただければ」と話す。また欧州では「白鶴錦 純米大吟醸」をキービジュアルに展開。自社開発した酒米「白鶴錦」で醸した高級酒だが、ブランドの認知アップにも効果的だという。

このほど「神戸ビーフ」専用の輸出商品「白鶴 純米大吟醸 弐久(にく)~Sake for KOBE BEEF~720㎖」を発表、話題になっている。神戸ビーフの豊富な旨みと相性抜群の濃厚な味わいで、上質で特別な体験を演出する。当面は欧米における「神戸ビーフ」のプロモーションイベントなどで提供。23年春から海外の「『神戸ビーフ』指定登録店」限定で販売する。