九州エリアの食品業界についてみると、食品スーパー(総合スーパーおよび百貨店を除く)は一昨年度は例年にない好調ぶりを発揮したが、昨年度はコロナ特需の反動を受けたことで、売上・利益ともに下降に転じる小売企業が続出。対して休業状態を強いられた百貨店やGMSは回復基調に転じてきている。
ここで主要流通企業の2021年度決算実績をまとめた(別表=2021年度九州エリアにおける主要流通企業の決算実績)。売上高(営業収益)ではコスモス薬品が7千554億1千4百万円で11年連続で首位となった。次に昨年と同じく2位のトライアルカンパニーは営業収益5千185億4百万円。21年から決算期を3月20日から6月末に変更したため、前期比較はできないものの21年3月期比で13.7%増。3位は旧イオン九州、マックスバリュ九州、イオンストア九州3社が合併したイオン九州が4千811億9千9百万円となった。
次に経常利益では売上高同様、コスモス薬品が前年比8.3%減となったものの、328億6千1百万円で11年連続で首位。ナフコは33.5%の大幅減益となったが、125億7千2百万円で2位を死守した。対して3位のダイレックスは一昨年度は37.4%の二ケタ増、昨年度は0.3%と微増の124億7千万円となった。
経常利益率首位はハンズマンの7.2%、2位のナフコ6.0%で上位2社をHCが占めた。両社ともに減収大幅減益だったが、他業態に比べて高粗利でもともと利益率が高い。
九州エリアでは流通企業各社が年末商戦に向けてリベンジ消費などの取り込みに努めているが、今期はガソリン価格の急騰に伴う物流費・原材料費の大幅増や電気代の大幅な値上げに伴うコスト負担の増加、メーカー側からの相次ぐ値上げが続いている。それだけに売価に転嫁できないと利益を圧迫されかねない厳しい状況にあるといえる。変異ウイルス拡大の可能性を含めて年末にかけては「コロナ第8波」の再拡大も懸念されていることで、コロナの感染状況をみながら対策を講じなければならない状況に直面している。加えて10月から最低賃金が改定されて流通企業各社はパートやアルバイトの時給を引き上げた。売上が伸び悩む中、時給の引き上げは収益を圧迫する。中堅以上のSMでは年数億円の負担増になると試算される。さらに夜間早朝や休日勤務の場合は上乗せされる。同じく10月から厚生年金の加入範囲も拡大された。厚生年金は従業員数501人以上の事業所で週20時間以上勤務すると加入が義務付けられていたのが101人以上に引き下げられた。保険料率は企業と従業員の折半となるため、スーパーにとって2重の負担増となってきている。こういった状況を反映して各社における店舗作業の合理化などの生産性改善がより求められている。
九州エリアは人口減を受けて小売市場のシュリンクが加速する一方、オーバーストアに起因する価格競争が継続するものと想定される。経営環境の悪化に伴い単独での勝ち残りが難しくなる中、全国的にはエリアを越えた合従連衡が進み、アフターコロナを視野に入れた設備投資が活発化する見通し。さらに業態間における競争が激化する様相を呈しており、コロナ禍をきっかけに小売流通企業各社では自助努力が求められている。
企業間における収益格差がより広がりをみせてきていることで、業界再編の流れが加速する可能性が高まってくることも十分に考えられる。それだけに引き続き九州エリアの各流通業界の動向について今後も目が離せないところとなっている。恒例の「九州小売流通特集(冬季)」(12月5日付本紙)ではコロナ禍における状況を踏まえたうえで、九州各エリアの主要流通企業の動向や詳細についてお伝えする。