伊藤園は人手不足に悩む茶農家の障害者雇用などの人材多様化の動きを推進する。
14日に伊藤園直営店で販売開始されるリーフ製品「ふんわり香る静岡茶」は、足久保ティーワークス茶農業協同組合(静岡県静岡市)が生産してノウフクJASを取得した荒茶を伊藤園が全量買い取り、同荒茶を100%使用して加工したものとなる。
伊藤園の直営店でノウフクJAS認証マークのシールPOPを添付し接客を通じてノウフクJASや農福連携の取り組みを伝えていく。
ノウフクJASは、障害者が生産工程に携わった食品の農林規格で2019年に制定された。
足久保ティーワークスは今年の一番茶から障害者が雑草取りから収穫作業までの一連の工程を担う農福連携による生産を開始し、煎茶では全国で初めてノウフクJASを取得した。
農福連携とは、障害者ほか、高齢者、生活困窮者、触法障害者(障害と疾病を併せ持つ罪を犯してしまった知的障害者と精神障害者)など社会的に生きづらさがある多様な人々が農業分野で活躍することを通じて自信や生きがいを持って社会参画を実現していく農水省推進の取り組みで、茶農家としては人手不足解消の一環でもある。
静岡茶発祥の地とされる足久保でも人手不足は長年の課題で、同組合の所属農家は1996年の設立当初の半数強となる35軒まで減少。多様な人材が茶業に参加できる環境づくりが課題となっている。
伊藤園は従来から、茶産地育成事業の一環で、茶葉を全て買い取るとともに栽培指導やさまざまな情報提供を行い茶葉の品質向上を目指す「契約栽培」を足久保ティーワークスで展開。
今回、製品を通じてノウフクJAS取得をアピールすることで茶農家の人材多様化の動きを応援していく。
「今回新たに開始する農福連携によって生産した茶葉の取り扱いを通じて、バリューチェーンにおける多様な人材の活躍とソーシャルインクルージョン(誰も排除されず、全員が社会に参画する機会を持つこと)の推進、そして持続可能な国内農業へ貢献していく」(伊藤園)考えだ。
足久保は、鎌倉時代の僧・聖一国師(しょういちこくし)が宗(中国)から持ち帰った茶の実を中国の茶産地と似た地形であることに目をつけて蒔いたのが静岡茶の始まりとされる。
足久保の地形は安倍川の支流・足久保川を中心に左右は山に覆われ、日照時間が短く、昼夜の寒暖差が激しく、天然の遮光である朝霧が立ち込めやすい土地柄となる。
遮光効果で光が制限されると、茶はわずかな日光を効率よく利用するため、葉緑素を増加させ緑が濃くなる。茶の旨み成分であるテアニンは、葉中で光の影響を受けてカテキン(渋み成分)に変化するが、遮光下ではこの変化が抑えられるため旨みが多く渋みが少なくなる。
「ふんわり香る静岡茶」は、足久保産一番茶を100%使用し、浅蒸しの細くよれた艶のある茶葉に仕立てもので「爽やかな甘い香りと、ふくよかな旨みが特徴」という。80gで販売価格は税別2100円。