片岡物産「モンカフェ」人気No.1のロングセラー商品を終売 新商品「プレミアムブレンド」に差し替えて背水の陣で臨む理由は?

 片岡物産はこの秋、ドリップコーヒーブランド「モンカフェ」のロングセラー商品「マイルド ブレンド」を終売し、その差し替えとして新商品「プレミアムブレンド」を発売している。

 「マイルドブレンド」は1993年の発売以来30年にわたり「モンカフェ」ブランドの人気No.1商品として支持されてきた同ブランドの屋台骨に位置づけられる商品。

 「マイルドブレンド」終売の背景の1つに、コーヒーの味覚ポジションの中で、中庸なマイルドな味わいが昔に比べて訴求力を失い、濃度・濃縮感に起因するコクを重視する消費者が年々増えているということがある。

 新商品との併売やリニューアルという選択肢もあったが、なぜボリュームの大きいアイテムを切り捨てて背水の陣で臨むのか。
その理由は、「マイルドブレンド」を変化するニーズに合わせて抜本的に見直すことでブランドの幹をより強くしていくことにある。

売場に並ぶ「モンカフェ プレミアムブレンド」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
売場に並ぶ「モンカフェ プレミアムブレンド」

 「プレミアムブレンド」は、「マイルドブレンド」ユーザーをそのまま受け継ぎ、ブランド全体をより力強く牽引していく役割を担う。

 取材に応じた藤原啓史モンカフェブランドマネージャーは「『マイルドブレンド』では原料の品質の良さを目に見える形でお客様に伝えきれていないという課題感と、昨今のお客様の好みの変化への対応、という2つの観点から単なるリニューアルにとどまらない新しいブレンドの開発がスタートした」と説明する。

 「プレミアムブレンド」では、良い原料を使っていることを視覚化して訴求するため、スペシャルティグレード豆というモンカフェ独自の規格を設定してブレンドと焙煎を追求した。スペシャルティグレード豆は、スペシャルティコーヒーとは別規格で、アメリカスペシャルティコーヒー協会(SCA)が認定する香味判定資格を有する審査員(Qグレーダー)によってコーヒー豆の味わいを点数化し80点以上となったコーヒー豆で、さらにそこから機器分析を経たものとなる。

藤原啓史モンカフェブランドマネージャー - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
藤原啓史モンカフェブランドマネージャー

 機器分析では、ビジュアルアナライザーという機器を使用して検体を4096色に分けて解析。これにより良質とされる豆に多く含まれる色彩を持つ生豆のみを選定していく。

 「プレミアムブレンド」には、この官能評価と機器分析の2軸で厳選されたスペシャルティグレード豆のコロンビア豆とブラジル豆を全原材料中の80%以上配合している。

 焙煎は、それぞれの豆を最適な焙煎度で焼き上げた後にブレンドするアフターミックスの焙煎手法を採用。
コロンビア豆を主体とする生豆を浅煎り、ブラジル豆主体とする生豆を中深煎りで焙煎しブレンドしている。

 その香りや味わいの特徴について、コーヒー鑑定士で商品開発を担当する武内裕佑氏は「柑橘系をイメージした香りをアクセントとして加えた。味に関しては『マイルドブレンド』よりも少し酸味が立つようにしている。酸味は人によって好みが分かれるため、嫌な後味を残さないように甘さやコクで肉付けして味にボリュームを持たせた」と語る。

機器分析では検体を4096色に分けて解析 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
機器分析では検体を4096色に分けて解析

 同時に「マイルドブレンド」ユーザーをつなぎとめることも意識。

 「『マイルドブレンド』ご愛飲のお客様に受け入れてもらえるかという大きなプレッシャーを感じながらの取り組みだった。ただ『モンカフェ』で使用しているコーヒー豆の品質の良さは肌身で感じながら仕事をしているため、これまでご愛飲いただいた方にも喜んでもらえるよう常に客観的に考えながら味づくりにトライした」(武内氏)と振り返る。

 ユーザーをつなぎとめる施策として「マイルドブレンド」の中にメッセージカードを同封して「プレミアムブレンド」が「マイルドブレンド」の後継であることを伝えた。

コーヒー鑑定士・商品開発部の武内裕佑氏 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
コーヒー鑑定士・商品開発部の武内裕佑氏

 「プレミアムブレンド」の本体価格は、「マイルドブレンド」の規格と変更なく10袋入りで500円。「モンカフェ」では、昨年から今年にかけて、容量減も含めた値上げは行われていない。

 「プレミアムブレンド」の発売を機に、自宅で外食カフェの味わいを楽しみたいユーザーの取り込みも加速させるため、ハンドドリップの流儀を忠実に守ったフィルターがコーヒーに浸からない構造であるカップオンⓇタイプの魅力も引き続き伝えていく。

 通常、抽出時にフィルターがコーヒーに浸ってしまうと、余計な雑味や苦みまで出てしまい、コーヒー本来のおいしさが損なわれがちになる。

 これに対しカップオンⓇタイプは、フィルターがコーヒーに浸からないことで雑味のないすっきりとした味わいと芳醇なコクが楽しめるようになっている。

フィルターがコーヒーに浸からない構造であるカップオンタイプの魅力も訴求 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
フィルターがコーヒーに浸からない構造であるカップオンタイプの魅力も訴求