富山、石川、福井の3県で人口295万人(全国の2.3%)の決して大きいとは言えない北陸で、ここ数年ドラッグストアの新規出店が激しい。中部経済産業局北陸支局によると、20年初~21年末の2年間のドラッグ店舗数伸長率は、全国平均の7.2%増に対し、北陸は24.5%増と異常なほどで、人口1万人当たりの店舗数は全国1.4に対し、北陸はその1.5倍の2.1と全国トップクラスの競合状況にある。そういった中で地元スーパー(SM)は影響を受けるが、北陸有力SMは本来の姿である価値の追求にあらためて舵を切っている。
ドラッグの異常な新規出店の中心は、地元石川の「クスリのアオキ」と福井の「ゲンキー」だ。きっかけの一つは17~18年の「コスモス薬品」の北陸上陸で、時をほぼ同じくして愛知の「スギ薬局」も北陸強化に乗り出し、これらに他チェーンも相まった。
ただ、もともと人口が少ない地域では、ドラッグ同士の競合に陥るのは自然の理で、現在の店舗伸長率(下表参照)は一ケタ台と一時期に比べれば落ち着いているが、それでも各業態の中で出店意欲は圧倒的に高い。
一方、SMでは基本的に内食化は継続しており、安定した成長を続けている。シェアは地元の「アルビス」と「大阪屋ショップ」の2社が高く、これに全国系の「バロー」「平和堂」「イオングループ」が続き、この5社で食品市場の約5割を占めているというデータもある。また、各地域には石川県七尾市の「どんたく」、金沢などで展開する「マルエー」、福井の「ハニー」チェーンなど地元から支持の高い企業も多い。
ただ、ドラッグの拡大をまともに直撃するのが1~5店舗前後の地方SMで、生鮮のノウハウが欲しいドラッグの買収対象になっている。クスリのアオキは全国的にスーパーの買収に乗り出しているが、北陸では20年に「ナルックス」(当時5店舗)を買収した。またSM「三崎ストアー」(金沢市)は4店舗のうち、1店舗を売却し、そこでクスリのアオキの生鮮テナントとして再出発する道を選んでいる。
そういった中、いかに強みの生鮮や地元の食品・食文化で差別化していくかが食品SMの命題で、異業種には「絶対に負けられない」(地元大手)領域だ。
「アルビス」は、「新たな商品開発の形」(池田和男社長)とする地元メーカーが作る消費者参加型の商品を発売。「大阪屋ショップ」は今期あらためて「サービスレベル向上」を掲げ、接客の先に消費者への気づきを追求。「どんたく」はイベント性を関連させた取り組みを積極的に行い「どんたく=楽しい」をあらためて訴求している。
異業種が得意の安売りは消費者を引き付ける一つの手段。これ以外に、商品、サービス、接客などで消費者を引き付ける「価値」をいくつ持っているかが、より問われてきそうだ。