伝わる「分かりやすさ」とは

「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く、面白いことを真面目に」。井上ひさしさんの言葉だ。小説、戯曲の創作でこの言葉を心がけていたと聞く。物書きでなくても日常生活で円滑なコミュニケーションを図るために必要な心掛けだと思う。

▼このコロナ禍では感染に関する専門用語が巷に氾濫した。耳慣れず、しかも禍々しい語句がさらに恐怖心を煽った。ビジネス領域でも日々絶えず新出用語が出現している。油断すると本質が何か分かっていないのに使ってしまい空虚なコミュニケーションに終わってしまうことがある。

▼その点、食品業界はまだましか。商品価値が消費者に伝わらなければ買ってもらえないし、第一、売場の棚に並ばない。

▼この秋冬の新商品ではコロナ環境下での生活に寄り添った切り口の商品が散見されたが、為替安や原料など諸コスト高もありメーカーはさぞ提案しづらかっただろう。だが、分かりやすさが「安さ」だけでは駄目だ。個別企業はもちろん、業界も健全な成長ができない。この点を改めて確認したところだ。

EU農産品  - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)