佃煮 停滞市場に新たな価値提案 根底にSDGs

縮小傾向にある佃煮市場において、メーカーは新たな切り口の商品を投入し、市場の活性化を図ろうとしている。新商品を通し提案する食感や簡便性といった付加価値の根底には、産地との協業や廃棄原料の活用など、サステナブルな取り組みがある。そのことがさらなる関心を集め、購買層の拡大につながる期待もある。

佃煮の主原料である昆布の生産量は減少が続いている。海洋環境の変化に加え、北海道を中心とする産地は高齢化や後継者不足といった他の一次産業と同様の問題を抱える。

こうした中、フジッコは乾燥工程を経ていない「生昆布」を使った佃煮を商品化した。通常、昆布は水揚げ後に天日干しし乾燥させるが、同社では重労働であるこの工程を省き、生昆布のまま加工し製品化する取り組みを産地と進めてきた。今回発売した「ふじっ子煮 おやさい昆布」は北海道産の冷凍生昆布を使った業界初の商品。

従来の昆布佃煮とは違う「もちっと食感」をアピールする。同時に、産地の負担軽減につながるサステナブルな取り組みから生まれた商品として注目される。

マルヤナギ小倉屋「大豆の肉味噌風」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
マルヤナギ小倉屋「大豆の肉味噌風」

マルヤナギ小倉屋は、チューブ入りの佃煮「ごはんにイチおし」シリーズ2品を発売した。押すだけで必要な量が取り出せ、箸を使わず衛生的など、既存のカップや袋入りにはないメリットを強調する。

事前のテスト販売では、甘口の味付けとともにこうした簡便性が受け入れられ、子育て世代の購入者が6割以上を占めた。「これまであまり佃煮を購入することのなかった世代に支持されている」(柳本勇治社長)と期待を込める。

同シリーズの「大豆の肉味噌風」は、肉の代替として蒸し大豆を使用。肉と比較した場合の食物繊維の豊富さや生産時のCO2排出量削減など、栄養面・環境面からも商品価値を訴求する。

停滞する佃煮市場にあって、看板商品に次ぐ規模に成長しているのがブンセンの「おかか」シリーズだ。同社では佃煮ではなく、ウエットタイプの「惣菜ふりかけ」と位置付けており、2018年に第1弾の「ごぼうおかか」を発売した。その後、「たくあん風おかか」などを投入しシリーズ化。今回新たに「らっきょうおかか」が加わった。

そもそもは惣菜を製造する際に処分していた、ごぼうの皮を有効活用するために生まれた商品。現在は、同社の主力「アラ!」「塩っぺ」に次ぐ商品へと成長した。

このように商品そのものの価値に加え、その背景にある各社のサステナブルな取り組みが関心を呼び市場活性化の一助になることが期待される。