「23年麦価は従来制度運用を」 製粉協会 山田新会長

製粉協会の新会長に就任した山田貴夫氏(日清製粉社長)は8月30日、都内で専門紙記者懇談会を開き、就任の抱負に加え、「輸入小麦の政府売渡価格への対応」「小麦粉の安定供給」「内麦振興」など今期の重点課題への対応方針について語った。

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2年半以上続いている新型コロナウイルスの感染拡大、今年2月からのロシアによるウクライナ侵攻、さらにはコストインフレの拡大などにより、国内外の経済・社会が大きな影響を受けている。こうした中での就任になり、大変身の引き締まる思いだ。これらの事象は現在も継続しており、先行きの見通しは不透明。引き続き当協会としての立ち位置を踏まえ、会員各社や関係機関としっかり連携して直面する課題に適切に対応したい。

前回も国際貿易交渉という大きな課題を背負っての会長就任だったが、環境や対処の方法こそ異なるものの会員各社とコミュニケーションをとりながら意見を取りまとめ、所轄官庁に働きかけるという意味では共通していると感じる。

重点事項は3点ある。「輸入小麦の政府売渡価格への対応」「小麦粉の安定供給」「内麦振興」だ。岸田文雄首相は10月の輸入小麦の政府売渡価格を現在の水準に据え置くよう、野村哲郎農水大臣に指示した。小麦粉ユーザーである2次加工業界が製品の価格転嫁に苦慮されている現状も耳にしている。価格転嫁が需要減につながり、最終的には国民生活に影響を及ぼす事態を考えると、岸田首相の指示は大きな意味があると理解している。

ただ一方で、相場に大きな変動があった際も売渡価格への影響が緩和されるという現行の国家貿易制度が、国民生活の安定に貢献しているということについてもあらためて認識する必要があるのではないか。来年4月以降の輸入麦価は、これまで通り制度に則って改定していただけるようお願いしたい。

「小麦粉の安定供給」は業界の社会的使命だ。ロシアによるウクライナへの侵攻で小麦の世界的な供給懸念が報じられている。日本は米・加・豪の輸入が大半で、露・宇からは直接受け入れていない。ただ、この問題が長期化することで、世界小麦市場の需給バランスが変化することは十分に考えられる。将来的に日本の小麦供給確保に支障が生じることもゼロではない。情報収集に努め、農水省と連携し安定供給に努めたい。

「国内麦」は近年天候に恵まれ豊作が続いており、供給量も増加している。一方でパンデミック以降は小麦の需要量が減少し、以前の水準までは回復していない。業界と会員おのおので需要拡大に向け、さらなる努力をする必要がある。生産者においても品質向上や作付面積の維持に取り組んでいただきたい。実需者と生産者がそれぞれの立場で一層の努力を行うことが需要拡大につながると考える。