製油・製粉 円安で膨らむ原料コスト 食糧インフレへの対応急務 今期2千億円を超す負担増

世界的な穀物価格の高騰と円安進行で、製油・製粉業界のコスト上昇が深刻化している。食用油では昨年から5度にわたる価格改定を実施。店頭価格の値上げが進んできたが、コスト上昇に追いついていない。製粉業界では、輸入小麦の政府売渡価格が2期連続の大幅上げでパンや麺類の価格改定が相次ぎ、10月以降さらなるコスト上昇が懸念されている。22年度の製油・製粉業界のコスト影響額は、現時点で少なくとも2,000億円を超える見通し。今後の原料相場や為替の行方次第で、さらに膨らむ可能性もある。多くのカテゴリーで値上げが相次いでいるが、食糧インフレとコストアップとの闘いはこれから本番を迎える。

日清オイリオ、J-オイルミルズ、昭和産業の製油大手3社の前期決算は増収減益。大豆・菜種・パーム油の主要油脂原料が高騰し、価格改定効果で売上高は2割程度増加したが、原料コスト上昇分をカバーできていない。

大手3社の営業利益増減要因から分析した、前期の原料コスト上昇による影響額(大豆・菜種などの原料代および為替の増減からミール販売を除いた油脂コスト上昇分)は、日清オイリオ391億円(国内油脂事業)、J-オイルミルズ293億円、昭和産業198億円(油脂食品事業)。大手3社で882億円もの負担増となった。これを価格改定で補いきれず、各社で影響額は異なるが1社で30~50億円の減益となった。

今期に入り、製油各社の経営環境は一層厳しさを増している。世界的な油脂需要の増大と天候異変による減産で相場が高止まりする中、ウクライナ情勢の影響による需給ひっ迫懸念で相場は高騰。直近ではシカゴ大豆1ブッシェル17ドル近辺、菜種1千100加ドル、パーム油6千リンギの歴史的高値で推移している。さらに為替が直近135円まで円安ドル高が加速。21年の平均110円に対し2割程度の円安となっており、コスト増加に拍車をかけている。

22年度の製油大手各社の原料コスト影響額は、日清オイリオ342億円、J-オイルミルズ455億円と、昨年よりもさらに膨らむ見通し。多種多量な穀物を取り扱う昭和産業は「現時点で予測が困難」と業績予想の公表を見送った。

昨年に続き、製油大手2社で年間800億円規模のコスト増加を見込んでいるが、今後の米国大豆やカナダ菜種の生産状況や為替次第で影響額はさらに膨らむ可能性もある。

製油各社は汎用油について、4月の40円/㎏以上に続き、7月から60円/㎏以上の価格改定を発表。大豆・菜種だけでなく、すべての油脂製品でも値上げを進めており、原料コスト増大への対応を急いでいる。

製粉業界では昨年10月、今年4月と輸入小麦の政府売渡価格が2期連続で大幅な引き上げとなり、パンや麺類など二次加工品の値上げが相次いでいる。ロシアのウクライナ侵攻で小麦の国際相場は史上最高値の14ドル水準に上昇、直近では10ドル水準に戻したが、依然として歴史的高値で推移。次回10月期の麦価改定はさらなる上昇が見込まれており、状況によっては政府として激変緩和措置を講じる姿勢を示した。

大手製粉メーカーでは、国内製粉事業の原料コストを10月の麦価改定を考慮しない段階で、前期比360億円の増加を見込んでいる。製粉業界全体では900億円規模の負担増となる見通しで、10月の麦価改定でさらに膨らむことは確実な情勢だ。

すでに多くの食品で値上げが本格化しているが、食用油・小麦粉をはじめとする原料価格や電気代・燃料費などのコスト上昇は、今後さらに大きなインパクトとなってきそうだ。