通年ギフトの浸透へ小売デジタル化の流れを

一昨年、昨年と異なり、百貨店や大型店の営業制限がない中で迎えた今年の中元商戦。コロナ禍のこの2年で獲得したECなどの新たな需要を維持しつつ、店頭に顧客を呼び戻し上乗せできるかがカギとなる。中元や歳暮がいまだギフトのボリュームゾーンであることには変わりないが、将来にわたりその規模を維持できるとは考えにくい。そのため、年間を通じたギフト需要をいかに掘り起こすかが業界の共通課題だ。

コロナ禍において百貨店は店頭売上の減少をカバーすべく、ネットや電話による受注の獲得に力を注いだ。結果として、家にいながら買い物できる利便性などが改めて認識され、ネット販売が予想以上に定着したところも多い。

近鉄百貨店は現在、ギフト売上に占めるECのシェアが2割に達している。阪急阪神百貨店は阪急うめだ本店の今季ギフトの目標を101%とするが、ネットに関しては107%とより高い伸長を目指す。百貨店はもともと年間を通じECを活用したギフトの販売を行っており、中元や歳暮でそれらが広がったことで、通年ギフトの拡大もさらに進むと思われる。

一方、量販店がギフト販売に注力するのは中元と歳暮、もしくは母の日や父の日などに限られ、それ以外の平月にギフトや手土産の売場を設ける店舗はまだ少ない。

ただ、最近はネットスーパーの取り組みを強化する小売業が増えている。こうした流れをギフトの商売に絡めることで、「年間を通じ売上を拡大できる余地はまだ大きい」(伊藤忠食品西日本営業本部・営業第四部の伊藤剛部長)とみられる。日常的な買い物で進むデジタル化を、ギフトの通年販売にいかに取り込むかが今後の課題になりそうだ。