日本植物油協会・新妻会長 内外のパラダイム激変、安定供給へ責務果たす

適正価格構築は継続課題

日本植物油協会の新妻一彦会長(昭和産業社長)は、協会長就任に当たり抱負を次のように語った。

  ◇ ◇

コロナ禍の影響が継続する中で、国民の生命を守る植物油の安定供給維持と消費拡大により業界の健全な発展に尽力している。昨年来、植物油の価格は歴史的な高値圏にあり、世界的に食糧価格が上昇している。ロシアのウクライナ侵攻で、油糧種子の需給は一段と不透明さを増している。国内製油各社は昨年来、数度にわたって価格改定を実施してきたが、長期化する原料コスト上昇をキャッチアップする厳しい状況が続いている。

油脂価格高騰の背景にはウクライナ情勢による特殊要因もあるが、供給面では天候異変や異常気象による減産、需要面ではコロナ禍からの経済回復による需要増加やバイオ燃料の拡大によって需給ひっ迫の懸念が強まっている。もはや一過性ではなく、構造的な変化に直面しており、これに対応した国内市場の構築が喫緊の課題となっている。円安の加速、原油高によるコスト上昇など厳しい環境が続く中で、適正価格構築の取り組みを粘り強く継続し、国民生活を支える植物油のサステナブルの供給責任を果たしていくことが重要だ。

協会では政府や関係団体と連携し、米国・カナダ・マレーシアをはじめとする原料輸出国とパートナー関係を深め、安定供給確保に向けた取り組みを継続するとともに、わが国フードシステムの基幹産業として関連団体との連携を強化し、安全・安心な植物油を安定的に届け、食品産業全体の発展に貢献していく。

環境問題への取り組みも重要だ。製油業界は早くから温室効果ガス削減に取り組み、高い水準で目標を達成してきたが、政府が新たに策定した2050年の削減目標達成に向けて、各社の現状を踏まえ着実に削減努力を継続していく。プラスチックごみ削減の取り組みを引き続き推進し、ケミカルリサイクルの新たな技術開発にも注視していく。プラ容器包装の再商品化では、制度のより良い発展に向けて社会的コストの全体低減を踏まえた対応も課題となる。

コロナ禍で生活が変化する中で、健康意識が高まり、植物油の価値が見直されてきた。家庭用ではオリーブ油やこめ油、アマニ油・えごま油など多様な植物油が注目され、市場は活性化している。コロナとの共生が進み、経済活動が再開に向かう中で、外食の需要回復も期待されている。コロナ禍で生じた閉塞感を打破し、植物油の新たな時代を創出していくために、関連団体と連携した植物油の情報発信や広報普及にも力を入れ、会員各社がフェアな競争のもと、食品業界全体の発展と市場の活性化に尽力していく。