伊藤園は“おいしさの逆算”を毎年進化させて「お~いお茶」の飲料に磨きをかけている。
今回は旗艦アイテムの「お~いお茶 緑茶」(本体)に「お~いお茶」専用に丸く加工された原料茶葉を使用して中味を刷新し3月14日から発売している。
“おいしさの逆算”とは、「お~いお茶 緑茶」が製造・保管・輸送され店頭に並び消費者がキャップを開栓する瞬間に起点を置いておいしさを追求する手法で、その点、急須で淹れるお茶リーフ(茶葉)商品とはおいしさへのアプローチが全く異なる。
取材に応じた安田哲也緑茶ブランドグループマネジャーは「リーフでは淹れたてが一番おいしいが、パッケージ飲料で淹れたては提供できない。製造・物流を経てお客様にお届けするまでに2~3週間はかかることから、そこから逆算して原料・製造を追求している」と語る。
お茶の大敵は酸素で、主流容器のペットボトル(PET)は未開栓でも酸素を若干透過してしまう性質を持つ。
「お茶の劣化の速さを表す“宵越しのお茶は飲むな”という言い伝えがあるが、PETはその限りではない。ドリンク専用の茶葉と独自製法を取り入れて、飲まれるまでの時間を考慮しながら酸素や熱の影響をコントロールしてキャップを開けた瞬間に一番おいしい状態を想定している」と説明する。
これらの取り組みは長年行われているものではあるが、今回のリニューアルで初めて公開したのは「お~いお茶」専用原料「新・鮮度茶葉2022」と称する丸い茶葉。
茶葉は、摘採した生葉を近接する加工工場で、鮮度を保ったまま荒茶へと加工される。
その際、リーフ用は見た目も重視されることから棒形状にされるが、ドリンク用はそこにはこだわらず加工スピードを追求。酸素との接点を減らしたのが今回の「新・鮮度茶葉2022」となる。
通常よりも強い力で揉みこむことで、後の製造工程である火入れと抽出をより効率的に行い、これにより製造時間のさらなる短縮化を図り鮮度アップを実現した。
「新・鮮度茶葉2022」は公式サイトやSNSで発信。
有村架純さんと松本穂香さんを起用した新TVCM「本物のおいしいを、茶畑から。」編では、キャップを開けた時のおいしさを強調。松本穂香さんが「開けた瞬間の」と連呼し、その裏付けとなる「新・鮮度茶葉2022」への興味喚起も図っている。
CMは茶畑の訴求をメインとする。「味づくりの原点は茶畑にあるので地道に伝えていく」考えだ。
茶畑の取り組みでは、茶産地育成事業を拡大し、ドリンクに適した茶葉を茶農家と育て、安定供給の強化にもつなげている。
茶産地育成事業は、「契約栽培」と「新産地事業」で構成される。
「契約栽培」は、茶葉を全て買い取るとともに、栽培指導やさまざまな情報提供を行い茶葉の品質向上を目指すもの。
「新産地事業」は、地元の市町村や事業者が主体となり、未耕作地を大規模茶園に造成してもらい、伊藤園が技術やノウハウを提供して全量買い取るという仕組み。
サステナブルな農業形態である茶産地育成事業は1976年開始後栽培面積と生産量がともに拡大し、「お~いお茶」への使用割合を年々増やしている。
そのほか鮮度保持の取り組みでは、仕上げ加工した原料茶葉の在庫を極力なくし、飲料工場が必要とする量だけを仕上げ加工するやり方を追求している。
「仕上げ加工後は時間の経過とともに鮮度が損なわれるため、必要量だけを仕上げ加工して飲料工場に送るようにしており、その確度を年々高めている」という。
飲料工場では、おいしさは残しながら劣化原因であるオリを除去し、透き通った黄金色の液色を追求した同社独自の特許技術「ナチュラル・クリアー製法」を1990年から導入している。
また、売場での非常に強いLEDライトの光から中身の品質を守るために、17年から、PETの肩部に70本の溝(切子カット)を施して光を乱反射させるなど容器面でも鮮度保持を図っている。