食品の値上げが相次ぐなか、国内の主要パッカーがはちみつ製品の価格改定へ動きだしている。発表しているのは日新蜂蜜、日本蜂蜜、マルミなどで、最大手の加藤美蜂園本舗も値上げに踏み切る見通しだ。
今回の値上げの背景は他食品と同様、原料、物流、包材などのコスト高。はちみつは、国内流通する90%以上が輸入原料。主要生産国それぞれで状況は異なるものの、異常気象による減作や、コロナ禍での世界的な需給バランスの乱れも影響し高騰している。これに年初からの円安ドル高基調の為替変動も加わり、「コスト高を自助努力でカバーする限界はとうに超えた」(パッカー)状況となっている。生産国別で異なるが、20~40%の値上げは避けられなくなった。
たとえば昨秋、残留農薬問題が生じたアルゼンチン産は原料コストが2021年比で1・7倍に跳ね上がった。中国産は日本が約70%を依存しており、現在、採蜜シーズン中。天候要因などの減作情報はないものの、仕入れはドル建てのため、ニュークロップ(新蜜)は必然的に値上げすることになる。
2021年春のコロナ禍以降、パッカー大手は業務用の値上げを進めていた。家庭用に関しては、今年に入ってからの円安で「我慢の限界」(同)の状況となった模様だ。
国内のはちみつ市場は安定価格、安定供給できる中国産によって市場が発展してきた経緯があるが、ここ十年は産地のバラエティ化が進み、アルゼンチン、カナダ、ハンガリー、メキシコ、ミャンマー、ベトナムからの輸入が増加していた。
家庭用需要は2020年春の巣ごもり需要で増加したものの、2021年は下期でグリホサート問題が発生して消費がやや減少。厳しすぎた残留基準値を見直し、厚労省が12月17日に新たな基準値を告示して以降は落ち着きを見せているが、大幅な価格改定が消費者の購買意欲にどう影響するか危惧する向きも多い。
だが、蜜源の気象条件に左右されるみつばち由来の天然物であり、コロナ禍で世界的に需要が高まり原料のタイト感が強まっているだけに、値上げが避けられないのも事実だ。
はちみつ市場も近年は価格の二極化が進んでいる。ドラッグストアやディスカウンターなどでは現地充填したテーブルハネーが価格訴求商品として販売されている。世界的な原料高によって、これらの商品も販売価格の見直しが行われるはずだ。
一方、食品スーパーのはちみつ売場でも、陳列された商品は軒並み値上げすることが予想されるが、流通サイドでは「リピーターのほとんどは値上げしても買い控えしないのでは」「商品選択では、厳格な品質管理がなされ、国内充填されている中国産品にシフトする可能性がある」と予想している。素材が持つ健康イメージの高さが,値上げしてもどこまで機能するか期待される。