漬物業界では価格適正化の動きが再び活発化している。輸入原料が大きなウエートを占める酢漬や刻み漬などのジャンルは今春、有力メーカーが量目変更を実施したが、急激な円安によりすでに採算が合わない状況に陥っている。今後の事業継続に向けて、有力メーカーは秋棚での価格適正化の準備を進めている。
さまざまなコスト上昇が押し寄せている漬物業界にあって、いま最も問題になっているのが為替だ。1年前と比べて15円以上もの円安となり、輸入原料の割合が多い漬物ジャンルのメーカー経営者は頭を抱えている。
業務用が多い生姜漬は、21年の海外産生姜の価格は下がったが、海上運賃、人件費、塩、クエン酸など諸コスト上昇によりトータルでは前年と大きく変わらず、19、20年の原料価格上昇時に製品価格の適正化が図れなかったこともあって、昨秋から価格改定が実施された。
今年に入って円安がさらに進んだことから、業務用ガリの某有力メーカーは3月下旬から値上げに動いた。「生姜価格は年1回」という取引慣行を覆すのに苦戦したが、おおむね7月からの値上げを取り付けた。今秋の値上げを検討している有力メーカーもある。
らっきょう漬は昨年の中国原料が過去最高値となったことから、有力メーカーは中国原料使用の市販品について昨秋から量目変更を中心とした価格適正化を模索し、ようやく4月から店頭実施された。しかし、この量目調整は現在の1ドル130円前後を想定していない設定であり、今秋もう一段の価格適正化が必要な情勢だ。包材の手配もあり量目変更であれば早急に取りかからねばならないが、度重なる減量で商品の見栄えの問題もあり、「そろそろ価格のアップを」という声も業界から出ている。
にんにく漬も円安が大きく影響している。今年産の中国原料は作付面積が若干増え、生育もいまのところ良好だが、有力メーカーは「原料価格は下がらない」と見ており、円安も絡んで秋棚にて価格適正化を図る考えだ。
刻み漬は、大手メーカーが3月に一部の商品を量目調整したが、今春の円安進行により、もう一段の価格適正化を視野に入れている。業務用に強い某メーカーは今春価格改定を実施したが、新物の価格次第で取引先に価格を再提示する方針だ。
漬物業界は取引先の求める「値頃感」に長らく付き合わされてきたが、昨今のコスト高や円安は自助努力で吸収できる限界を超えている。事業の継続に向けて、不退転の決意で価格適正化を推進する動きが広がりつつある。