コスト増は販促対応も
贈答向けから家庭用、業務用をはじめ、お茶漬け、ふりかけなども製造販売し、シーズンを通じて幅広いカテゴリーで仕入れを行っている白子。コロナ禍での反転攻勢や21年度漁期に対する所感と販売見通しなどについて、原田勝裕社長に聞いた。
――21年度漁期はどうでしたか。
原田 秋芽の品質は良かったものの、数量は19年度に比べると少なかった実感がある。コロナ禍の長期化に伴い、需要減退の不安が完全に払しょくされていない状況下にしては、想定していたよりも値段は高かった。秋芽をもう少し買いたかったが、全体的には必要量は確保できた。特に、秋芽も冷凍網も上物が総じて高く数量が少なかったこともあり、各社が買い走りした影響が相場に反映されたのではないか。業務用を中心に良品に対する買い気が強かったと感じている。
数量に関しては、科学技術が発展し、昔に比べると海水温や栄養塩のデータを元に予測できるようになった。しかし、今年は黒潮の蛇行や東北地方で起きた地震により海水面が上下したことで、海水温や栄養塩に影響が出たようだ。
――各業界で値上げが相次いでいます。
原田 新型コロナウイルス禍が3年目に入り、ウクライナ情勢が落ち着くのも3年以上かかるとみている。ロシア産石炭をエネルギーにして製造される段ボールをはじめ、包装資材や物流費などのコストが軒並み上昇している。内心は海苔も値上げしたいが、実行できるような雰囲気ではない。数年前に業界で先頭を切って値上げに踏み切ったが、業界全体が値上げに向かう機運は醸成されなかった。さらに、スーパーや小売向けの一般加工品は末端に転嫁されるまで半年程度かかった。数銭単位で値上げや値下げに対応できる業務用に比べると、加工品の店頭売価変更は難しい。
一昨年の決算は前年比でマイナスだったので、前期は何とかプラスにしようと努力した結果、おかげさまで達成できそうだ。しかし、原価が上がった今期は利益確保が相当厳しくなる。
――チャネルごとの対応はどうしていきますか。
原田 スーパーや小売の加工品は、コロナによる影響は大きく受けていない。しかし、業務用とギフト用が如実に減ってしまった。仏事向けは昨年から多少戻りつつあるものの、コロナ前の19年度比では20%前後減少している。業務用は直接大きな影響が出ている。外出自粛や在宅勤務の影響で都心に人が出なくなったわけだから当然だ。
それでも大手コンビニ向けは戻りつつあり、相対的にフィルム海苔よりも直巻き用海苔が増えている。フィルム海苔のおにぎりはコロナ感染対策のため「直接手に触れるから敬遠されたのではないか」という話も耳にした。使用されているのは韓国産だが、ベンダーによれば安価だが品質が割と安定していて、色が変わったり割れたりしにくいのだという。使い勝手の良さもあって、現状では国産の下物に置き換わることは難しいだろう。
今後、さらに包材や段ボールの価格高騰が続くことが予想され、コストアップ分をどこかでカバーしなければならない。しかし、家庭用は現実的に価格転嫁するのが困難だ。他社の動向を見極めながら、販促回数を減らすなどの対応を検討していきたい。