三菱食品は21年度からの新たな経営方針として、23年度を最終年度とする「中経2023」を策定。グループの存在意義であるパーパスを「食のビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献する」と定め、目指すあり姿(ビジョン)として「次世代食品流通への進化(サステナビリティ重点課題の解決)」を掲げている。メーカー・小売業、そして生活者に選ばれ続ける存在であるために、「中経2023」では卸機能の高度化と拡充によって新たな付加価値を提供し、さらなる成長につなげていく姿勢を明確にした。こうした中で、同社の前3月期決算は売上高1兆9千556億円(前期比1.2%減)、経常利益209億円(同20.4%増)。取引先との取り組みによる物流の見直しやDXによる効率化が寄与し、過去最高益を更新した。
同社は11年の4社統合後、物流コスト高騰や大型物流センターの先行投資が重なり、収益性低下が続いていた。
前期決算を振返り、京谷裕社長は「売上高は伸び悩んだが、効率化や付加価値化によって収益を伸ばせたことは大きな意味がある。踊り場から脱却し、4社統合の第2ステージとして新たな成長軌道に入った」と手応えを示した。
今後の成長戦略では、リテールサポート・メーカーサポート機能を活用した効率化DXと需要創造を加速させる。前者はAIを活用した需要予測や発注自動化、物流最適化の取り組みで、すでに2月から特定小売業とAIを活用した発注自動化に着手。上期中には当該企業向け全センターでの導入拡大を予定している。業界連携による食品流通全体の効率化・ロス削減にも力を入れる。
需要創造の取り組みでは、三菱食品が保有するビッグデータを活用した小売業の店舗誘客・販促提案を強化。メーカーの商品開発・マーケティング支援・生産最適化などの取り組みも推進する。
京谷社長は「人口減少で物量の拡大が難しい時代を迎え、量から質への転換を図っていく必要がある。今期から組織体制も見直し、顧客起点の経営サイクル実現のために、カテゴリー別の事業本部制からエリア統括制に刷新した。物量は増えず、コスト環境は厳しさを増す中で、持続可能なサプライチェーンを維持・構築するためにはメーカー・小売業と連携してコスト削減に挑み、新たな需要を創っていくことが重要」と強調する。
そのうえで「当社はすべての業態・カテゴリーと取引がある。成熟市場において全体を俯瞰できるポジションにいることは優位であり、デジタル技術も加速。業態やエリアを超えたデータを持つ当社の機能をさらに磨き、新たな収益の柱に育成する」と語った。