海苔漁期大詰め 63億枚水準も相場は冷静 読めぬ内需、海外勢台頭

21年度の海苔共販が最終盤を迎えている。主要メーカーや卸業者の話を総合すると、最終共販枚数は前年度より約1億枚少ない63億枚前後で着地するとの見方が大勢を占めている。63億枚は業界内で「大凶作」の衝撃が走った18年度(63.7億枚)とほぼ同じ水準だが、相場はおおむね落ち着いて推移。九州産を中心に良品が相場を下支えしたとみられ、平均単価は11円台と前年度(10.48円)を上回り、10円に届かない台割れ危機は回避される見通しだ。

全国漁連のり事業推進協議会によると、海苔共販実績(4月30日時点)で枚数が63億7千枚(前年度累計実績比2.0%減)、平均単価が11円79銭(1円28銭高)。産地別でみると、九州が39.5億枚(前年度累計実績比と同水準)、12.26円(1.31円高)、瀬戸内海が15億7千枚(5%増)、10.89円(1円39銭高)、東日本が6億6千万枚(20%減)、11.25円(0.92円高)となっている。漁期中盤以降、九州や瀬戸内海の数量が膨らんだことで、最終的に63億枚を維持することにつながりそうだ。

今年度の63億枚は、「46年ぶりの大凶作」と言われ平成最高値の平均単価を記録した18年度と変わらぬ生産水準だが、各社からは「これぐらいの枚数に慣れてしまった」「不足感や買いそびれはない」と総じて冷静な受け止めが目立つ。こうした反応の鈍さの背景にあるのは、先行き不透明な販売見通しと海外勢の台頭だ。

依然として続く贈答や家庭用の消費低迷に加え、市場をけん引していたCVSや業務向けのコア需要が長引くコロナ禍で失速。今年3月下旬までに「まん延防止等重点措置」が全国で解除され、感染症対策と経済活動の両立が進みつつあるものの、ランチや外食向け需要は最盛期の勢いには達していないのが実情といえる。

さらに近年、各社が実施した「減量値上げ」の影響により「繰越在庫が残っているのでは」との観測もあり、攻めの仕入れに転じる局面ではないことが一因になっている。さらに、中級品以下に関しては韓国と中国の海外産の存在感が顕著になっている。「年々海苔の数量、品質ともに安定してきている」と高く評価する加工業者は多く、国産の数量減に対する反応の鈍さの理由になっている。

一方で、今漁期の品質面に目を移すと、九州を評価する声が複数のメーカーから上がっている。厳しい販売情勢が続いているものの、「近年まれにみる良い海苔だったので買ってしまった感じはある。海苔屋の習性かもしれない」と特に漁期前半の秋芽、冷凍網を高く評価。また「瀬戸内海の下物に値ごろ感があった」と価格とのバランスを好感する企業もあった。縮小均衡の様相を呈する相場形成に危機感を持ちながらも、足元の需要底上げに向け今漁期の良品を追い風にした販促効果に期待を寄せる。