海苔 コロナで相場下落、戻り鈍く 続くコスト増、価格転嫁へ機運を 小善本店・小林善昭社長に聞く【21年度海苔漁期を振り返って①】

老舗の海苔問屋をルーツに持つ大手加工メーカーとして、近年は、人気キャラクターとコラボレーションした商品を企画したり、店舗で海苔やおにぎりの販売や店内飲食など新たな取り組みを展開している小善本店。「海苔を世界へ」をビジョンの元、仕入れから生産、販売までを手掛け、海外にも拠点を構える小林善昭社長に、21年度漁期と今後の見通しなどについて聞いた(取材は4月中旬)。

――21年度漁期が最終盤を迎えています。

小林 今期の生産枚数は63億枚前後になるだろう。比較的良品が多く、特に九州・有明産の一番摘みは近年まれにみるおいしさだった。単価は20年度比で約10%上がったという感じ。昨年に比べて上物が豊作だったので、単価を押し上げたのだろう。良い海苔だったので買い気が強かった。秋芽がこんなにおいしかったのは何十年ぶりだ。生産期に水温が順調に下がって最適な生育環境だったのだろう。しかし、中間から下物の相場は弱かった。コロナの影響から10円の台割れが散見された。コロナ禍が2年続いて相場が下がりすぎたため、今季は少し戻るかもしれないと思っていたが、コンビニと加工用は非常に冷静な印象だった。末端の消費が増えていれば相場は強かったと思う。各社が入り数を減らす値上げ対応をした結果、想像よりも在庫が多く残っているのではないか。

――国内外の生産動向と販売状況はどうでしょうか。

小林 国内は60億枚台の生産量が定着した。理由は下物を生産しなくなったから。平均単価が5円を切れば、生産者は赤字だ。数量の減少は、温暖化も相まって海苔養殖に向かない環境になってきている影響が大きい。養殖期間が短くなって生産能力が低下しているが、九州は40億枚を維持できている。近代化や設備投資ができており、収入増加のモデルが確立されているから後継者もいる。多くの産地では機材の更新など、億単位になる設備投資をするタイミングで辞めてしまう生産者が目立っている。一方で、韓国産の輸入が増え、日本産から置き換わっている。韓国産は、品質と数量が安定しているため毎年2億枚ずつくらい伸びている。輸入枠は決まっているが、事実上の「自由化」に近い。国内の海苔生産の担い手が減り、さらに海外産の流入は加速していくだろう。今後、数量が増えていけば、国産の取引相場に与える影響は大きくなると考えている。

――値上げへの対応について教えてください。

小林 人件費や包装資材、物流とあらゆるコストが上昇しているので、業界全体で価格転嫁することをお客様に理解してもらえるような説明力とそれを実行する力が問われる。かつてはコストアップを相場で吸収する感覚を持っていたが、物流費などがこれだけ上がっているため経営努力だけで対応するのは難しい。相応に値上げをしなければ将来的に生産者も成り立たなくなる。自社製品については、ECによる直販やスーパーにも新たな商品を展開している。「のりあーと」関連は年率で10%程度の伸びで、「のりカケルくん」も新規導入が着実に増えている。さらに種類も増やしていく予定だ。将来的に、数十億円を目指せるカテゴリーを目指し、地道に育てていきたい。