「飲めないの?じゃあウーロン茶だね」。そんな決めつけにはもうサヨナラ――。「お酒を飲まない人」にフォーカスしたマーケティング会社「スマドリ株式会社」を1月に設立したアサヒビールでは、飲む人も飲まない人も一緒に楽しめる社会の実現へスマートドリンキングの取り組みを加速。6月には渋谷にバーもオープンする。
「今はまだ顕在化していない新たな市場を作っていこうという成長戦略がスマートドリンキング。アルコールメーカーとしての社会的責務と経済的な価値の両立は簡単ではなく時間がかかるが、うまくやれば中長期にわたって大きなポテンシャルがあると考えている」(アサヒビール専務取締役マーケティング本部長・松山一雄氏)。
スマドリ社の見立てによれば、日本の20~60代約8千万人のうちお酒を飲まない人は約4千万人。このうち同社のターゲットは、「体質的に飲めない/飲めるけど飲まない」けれども「飲みの場は好き」という約1千300万人だ。
「そういう方々のお酒に対する思いを聞くと『飲める人ばかり楽しんでズルい!』というものだった。飲む人に比べて『アガる』機会が少なくて残念という人や、『お酒が飲めないからウーロン茶』というイメージで見られがちなことに、決めつけないでほしいと思っている人も。それをなんとか解決したい」(スマドリ・梶浦瑞穂社長)。
第1弾は、東京・渋谷センター街に6月30日オープンする常設店「スマドリバー」だ。
「飲めない人専用のバーではなく、飲めない人のために作ったら、飲める人も楽しめる店になったというのがコンセプト」(梶浦氏)といい、アルコール分は0.00%、0.5%、3.0%の3種類を用意。アサヒビールの微アルコールビールテイスト飲料「ビアリー」や、新発売の微アルコールスパークリング「ビスパ」、ハードセルツァー「VIVA」など、クラフトドリンクを含む100種類以上から自分の体質や好みに合ったドリンクを見つけることができる。
同店の来訪者データや関連SNSのデータを、商品・サービス開発やデジタルマーケティングに活用する。さらに飲食店向けにレシピや提供方法などの情報を広く還元し、新しい市場の広がりを後押しする狙いだ。Z世代の若者が集う多様性の街・渋谷から、スマドリのコンセプトを発信する。
このところ酒類業界では、スマートドリンキングやノンアルコール商品への取り組みを強化する動きが相次ぐ。ノンアル商品を「度数0.00%の酒」と位置付け、酒を飲む人も飲まない人も一緒に楽しめる社会を目指すサントリーの戦略もその一つ。大型連休期間中には東京駅構内に「のんある酒場」をオープン。オリジナルのフードとともに、さまざまな楽しみ方を伝える。
「サントリーのノンアルの発信は、非常にいいことだと思う。ノンアルをアルコールメーカーがしっかりやっていく、これを一企業だけでなく業界が一緒になって行うことで流れが加速するだろう。業界全体にとって前向きな動きになるような働きかけをしていきたい」(松山専務)。