UCCホールディングスは、「UCCサステナビリティ指針」を制定し、自然の項目で「2040年までにカーボンニュートラルの実現」、人々の項目で「2030年までに自社ブランド製品を100%サステナブルなコーヒー調達にすること」などのグローバル目標を設定した。
持続可能なコーヒービジネスにあたり、世界的な気候変動と家族経営の小規模農家の脆弱性をリスクと捉え、目標を明確に定めることでUCC単独ではなく取引企業や業界を巻き込んだ大きな動きにしていくのが狙い。
「気候変動への対応について長期的な数値目標を設定して活動を加速させていく。サステナブルなコーヒー調達に関しても具体的な目標設定をして世界にポジティブなインパクトを与えていく」――。
27日発表したUCCホールディングス執行役員サステナビリティ担当UCC上島珈琲取締役副社長の里見陵氏はこう意欲をのぞかせる。
目標設定では実行性を伴うことを重視し、自然と人々それぞれの目標に中間目標を設けて推進を着実に進めるほか、今年構築したサステナビリティ・ガバナンス体制「グローバルサステナビリティシニアコミッティー(GSSC)」を機能させる。
GSSCは、UCCグループの主要事業エリアである日本・欧州・アジアを統括する事業会社の役員から構成されるシニアコミッティーで「取締役全員が深く全てのサステナビリティの課題を理解するというよりも、コミットした限定したシニアのリーダーシップチームがグローバルでサステナビリティの課題に対してコミットし1つ1つ課題を解決していく」。
自然の項目の目標であるカーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするもので、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量 から植林や森林管理などによる吸収量を差し引いて合計を実質的にゼロにすることを意味する。
UCCでは「自助努力で温室効果ガスの排出を減らし、あとは幾分カーボン・オフセット(排出量に見合った温室効果ガスの削減活動への投資など)で対応する。それだけでなく自社農園を運営していることから自然を増やしてポジティブにするアプローチもできる」との考えで推進していく。
中間目標では30年までに主に工場からの温室効果ガス排出量を19年比で46%削減する。
これに、生産・流通過程などを含めたサプライチェーン全体での温室効果ガス排出削減量の目標については現在算定中で今年中に開示を予定する。
生産地での活動は、JICA(国際協力機構)とともに活動している「ベレテ・ゲラ・フォレスト森林保全プロジェクト」のような自然を増やす取り組みに留まらず、農業で使用する堆肥やさまざまな活動に関する温室効果ガス排出削減も含まれる。
一方、小規模農家の生計改善に向けては、2030年までに自社ブランド製品を100%サステナブルなコーヒー調達にする。
具体的には「環境に配慮し、児童労働・強制労働していないかなど様々な確認をして付加価値のあるコーヒー豆として高く購入する。そうすることで生産者に還元させていただく。これに加えて直接的なサポートを行っていく」。
事業を持続させるために、このようにしてコストをかけた付加価値コーヒーが日本の消費者に受け入れられるように啓発活動も注力していく。
UCCは近年、中学生・高校生・大学生を対象としたオンラインセミナーによる次世代教育を実施し、コーヒーから気候変動をはじめとするSDGsの課題に触れる内容が好評を博しているという。
「2030年までに健康・教育分野で社会に大きなインパクトを」も目標に掲げ、サステナビリティ教育受講者数では30年までに累計30万人を目指していく。