キリンビバレッジは紅茶飲料市場トップブランドの「午後の紅茶」で無糖と微糖の商品を強化していく。
高まる健康志向を背景に、糖・カロリーの摂取を控えたいニーズに対応しつつ、紅茶が持つ嗜好性やおいしさを追求して市場活性化とブランド強化を図るのが狙い。
同社調べによると紅茶飲料市場の約8割を占めるのは有糖カテゴリーだが、今後の伸びしろとしては無糖と微糖で見込む。
これには「午後の紅茶」の無糖・微糖商品の21年販売数量が18年比で約7割増と大きく伸長したことも影響している。
3月16日発表した山田雄一執行役員マーケティング部長は「中・長期的に無糖や微糖といった摂りすぎない健康の領域がマーケットを拡大していく」との見方を示す。
無糖・微糖の強化に向けて、春先のイチオシ商品と位置付けるのが4月5日に新発売された「ミルクティー 微糖」。
微糖領域への再チャレンジ商品となり、前身の微糖商品「ザ・マイスターズミルクティー」との最大の違いについて、加藤麻里子マーケティング部ブランド担当主査シニアブランドマネージャーは「甘くないものが『ザ・マイスターズミルクティー』であるのに対し、『ミルクティー 微糖』は甘さがしっかりありながらカロリー半分の微糖を実現している点が最大の違い」と説明する。
「ミルクティー 微糖」は「ザ・マイスターズミルクティー」で浮上した課題を解消すべく開発された。
「ザ・マイスターズミルクティー」は19年3月に発売され発売約7か月で5000万本を売上げたものの、その後、競合各社から新形状の紅茶新商品の発売が相次ぎ競争環境が厳しくなったことに加えて「“甘くない”味わいをちょうどよいと感じるお客様の間口(飲用層)は狭く21年は大幅に低下した」。
この結果を受け、微糖ミルクティーの可能性を再度分析したところ「微糖ミルクティーへの期待は、糖やカロリーが抑えられている以上に、“甘さがちょうどいい”“味わいや香りが楽しめる”といったおいしさへの期待が上回っていることがわかった」という。
中味開発では、おいしさと糖・カロリー忌避の両立を図るべく、200を超える試作サンプルを経て紅茶・ミルク・甘さ――のベストバランスを追求し「微糖なのに有糖ミルクティーと遜色ないおいしさを実現した」。
ミルク分と茶葉は定番品の1つ「ミルクティー」と比べて1.2倍使用し、茶葉の10%にはミルクティーに好適なスリランカ産ウバ茶葉を採用して、カロリー50%オフの微糖で後味すっきりの飲みやすい味わいに仕立てられている。
同社調べによると、微糖の飲用意向は飲料カテゴリー別で缶コーヒー、ペットボトルコーヒーに次いでミルクティーが高く、このこととコロナ禍で経済性を求める消費傾向とともに高まる贅沢感を求める消費傾向を追い風に捉えている。
微糖に続いて好調の無糖も強化していく。
「おいしい無糖」も上期(12月期)中に3年ぶりとなるフルリニューアルを予定し、これに先立ち3月1日には「おいしい無糖 香るレモン」のパッケージを刷新して発売開始した。
「おいしい無糖」は2011年の発売時から10年連続で前年を上回り、昨年は「おいしい無糖 香るレモン」を含む「おいしい無糖」シリーズ計で1000万ケースの大台を突破した。
この好調要因については「紅茶以外の無糖茶からユーザーを獲得できている。無糖茶では補いきれない紅茶ならではの嗜好感もあわさり非常に多くのお客様からご好評いただいている」と述べる。
この中で「おいしい無糖 香るレモン」については「無糖とレモンの爽やかな味わいがあるということで炭酸飲料からもユーザーを獲得できている」とした。
有糖の「ストレートティー」「ミルクティー」「レモンティー」の定番3品は、CSVを基軸としたブランド・パーパス(ブランドの社会的存在意義)「いつでもお客様に幸せなときめきを届ける」の中核商品に位置付けるとともに若年のエントリー層獲得の役割を担う。
ブランド全体では今年、昨年の9品を上回る12品の商品投入を予定。
既に「まろやか白桃ミルクティー」の新発売と「おいしい無糖香るレモン」のリニューアル発売を実施し、今回の「ミルクティー微糖」の新発売で3回目の投入となる。
「今年は、発売35周年の節目となった昨年以上に進化させていく1年にしなければいけないと考え、昨年以上に、商品を含めてお客様に幸せなときめきを届けることで苦戦する紅茶飲料市場を盛り上げていきたい」と意欲をのぞかせる。