日清食品ホールディングスと新潟薬科大学髙久洋暁教授の研究グループは、油脂酵母(Lipomyces starkeyi)が生産する酵母油を使ったフライ麺の作製に、世界で初めて成功した。
今回、使用した油脂酵母はさまざまな糖を原料とし菌体内に油脂を生産、蓄積する酵母。これまでの研究で作られた酵母油は食品加工に使用できなかったが、同社と新潟薬科大学の研究グループは食用可能な培養液や油脂抽出法について研究を行い、「食用代替パーム油」の製造と食用代替パーム油を用いたフライ麺作製に成功したもの。現在、特許出願中だ。
油脂酵母が生産する酵母油は、アブラヤシから採れる植物油でインスタントラーメンを含む食品の製造に広く使用されているパーム油と非常に近い脂肪酸組成を持っている。タンク培養で生産可能で、気候の影響も受けず安定供給することが可能なため、パーム油に代わる資源(食用代替パーム油)として期待されている。
フライ麺は現在、蒸した麺をパーム油などで揚げる「瞬間油熱乾燥法」で製造しているが、「食用代替パーム油」で作製したフライ麺の味、香り、食感を評価したところ、パーム油で作製したフライ麺と同等の結果となったことから今後、工場での生産を想定した「食用代替パーム油」製造法の確立、実用化を目指す考え。
今回の研究成果は、「日本農芸化学会2022年度大会」(3月15~18日)で、一般演題1千346件の中から選ばれた学術的または社会的にインパクトのある「トピックス演題」として発表された。日清食品ホールディングスでは、「2017年に制定した『持続可能な調達方針』に基づき、地球環境と人権を尊重した原材料の調達を進めており、今回の新潟薬科大学との『油脂酵母が生産する酵母油を使った油揚げ麺の作製』に関する共同研究は、未来を見据えたこれまでにない資源調達を目指すものだ」としている。