前期特需で間口と奥行が一気に拡大したチルド麺市場。今期はその反動を受け市場は前年割れでの着地見通しだが、新技術により生ならではのおいしさそのままに賞味期限を延長した生中華麺が好調に推移する日清食品チルドは、外食の代替需要も取り込み、前年クリアで着地する見通し。伊地知稔彦社長が今後の成長戦略や賞味期限延長への取り組みなどについて語った。
◇ ◇
2020年度(2020年4月~2021年3月)はチルド麺市場が大きく伸長した。「巣ごもり需要」に代表されるように、家庭内でチルド麺が利用される頻度、食数が増加した。2021年度(2021年4月~2022年3月)の市場は、金額ベースで前期から5ポイント程度落ち込むだろうという予想だが、日清食品チルドの業績は前年をクリアできる見込みだ。ジャンル別では、ラーメン類(つけ麺、まぜ麺含む)が前年をクリアしている。特に、つけ麺、まぜ麺の伸びが顕著となっている。また、2食タイプで実勢売価が250円以上の「行列のできる店のラーメン」「つけ麺の達人」「まぜ麺の達人」や有名店とのタイアップ商品といった「プレミアム生中華麺」が特に好調だ。
(チルド麺の)従来のメーンユーザーは比較的年齢が高い層だったが、コロナ禍によって若年層(49歳以下)の利用率が高くなるなど、若干の若返りが起きている。チルド麺は主に昼食で消費されることから「昼食の内食率」に注目し、コロナ禍が始まってからは週単位で追いかけている。コロナ禍前は60%台だった昼食の内食率が昨年は70%前後、そして初の緊急事態宣言が発出された2020年4~5月ごろは80%を超えるような非常に高い内食率となっている。内食率は落ち着いてきているが、それでもコロナ前と比べると高止まりしている。
弊社では「プレミアム生中華麺」ブランドの売上が好調に推移している。外食需要の代替品として使われる機会が増えており、コモディティよりも、本格品質のプレミアムタイプがより多く使われている。特に若年層を中心に利用されているという大きな流れの中で、弊社のプレミアムタイプのブランドがニーズに対応しているのだろう。
日清食品グループ環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE2030」の一環として、日清食品チルドでは2020年から「おいしいeco麺」プロジェクトを立ち上げた。特に、社会問題となっている食品ロスを可能な限り減らすため、少しでも賞味期限を延長できないかという取り組みを進めている。現在、生中華麺は冷蔵で40日(一部50日)、昨秋、新技術「生めん常温長持ち製法」(特許出願中)により常温保存で賞味期限50日の生中華麺「鍋焼 日清ラ王」も発売した。「常温なので扱いやすい」と好評だ。
弊社としては今後、「プレミアム生中華麺」をどう成長させていくかが、チルド市場を活性化し、拡大するためのポイントになると考えている。新しい保存技術である「おいしさ長持ち製法」(特許出願中)をベースに、コロナ禍で増えた若年層にも支持される、ユニークで発信力のある商品開発を続けていく。