「多様なお茶の面白さ伝えたい」小豆島産ベルガモットやチョコなど多彩な切り口  体験の場も随時開催 お茶の専門集団が続々提案

 三井農林は今春グランドオープンした体験型ECサイト「nittoh.1909(ニットウイチキューゼロキュー)」で、小豆島産ベルガモットの生果皮で香りづけした和紅茶やチョコレートに合わせるためにブレンド技術を駆使した紅茶など新規性のある提案を続々と行っている。

 ティーバッグだけで年間約7億杯生産される「日東紅茶」ブランドをかかえる同社にとって、「nittoh.1909」はお茶の新しい挑戦の場であり、開発者と消費者が直接コミュニケーションできる場にもなっている。

 「nittoh.1909」を「開発者にとって実験場のようなもの」と声を弾ませるのは藤枝工場(静岡県藤枝市)で新製品の開発を担当するティーテイスターの秋林健一さん。

R&D本部応用開発部茶葉開発室室長兼経営企画本部プロモーション室の秋林健一氏 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
R&D本部応用開発部茶葉開発室室長兼経営企画本部プロモーション室の秋林健一氏

 「これまで短いサイクルで仮説検証を繰り返せる場所がなかった。『日東紅茶』でやろうとするとブランドが大きく、仮説検証には相応の時間と労力を要した。」と続ける。

 もともとお茶には興味がなく、2012年に品質管理から茶葉の調達担当へと異動となりティーテイスターとして勉強を始めてからお茶に目覚めたという秋林さん。
「いろいろな種類のお茶があることを最初に知ったときの感動を多くの人にシェアしたい。『nittoh.1909』」は自由度が高く、いい意味での“遊べる”場所で我々の伝えたい思いを具現化しやすい」と語る。

 

山田オリーブ園の小豆島産ベルガモットを確認する秋林さん - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
山田オリーブ園の小豆島産ベルガモットを確認する秋林さん

 

 秋林さんの直近の“遊び”は、産地を訪れ実際に原料を確認した小豆島産ベルガモットピールと和紅茶のみで創り上げた「Botanytea(ボタニティー)小豆島産ベルガモット」。

 特許出願中のフレッシュアロマ製法を編み出し、製造工程中に損なわれやすい生ベルガモットのフレッシュな香りを茶葉に定着させることに成功した。

 「フレーバーティーで一番メジャーなのは、紅茶葉にベルガモットから抽出した精油(香料)を加えたアールグレイ。これに対して『Botanytea』は生の果実で着香(ちゃっこう)して、もぎたての生ベルガモットのフレッシュな香りと茶葉との調和から生まれる余韻を打ち出した」。
使用した小豆島産ベルガモットは、オリーブ栽培で国内初の有機JAS認定を取得した山田オリーブ園で有機栽培されたものである。

「ボタニティー」ドリップタイプの個包装 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「ボタニティー」ドリップタイプの個包装

 大きくよれた茶葉形状も特徴。

 ティーバッグは味・香り・水色が出やすいように形が細かくなっているが、その分、渋みも出やすくなってしまう。一方で、「 Botanytea 」は茶葉を細かくせず、紅茶では珍しいドリップタイプにすることで、渋みを抑えてより香りを感じられる作りとなっている。

 その味わいが認められ、イギリスの高級食品小売組合「The Guild of Fine Food」が主催する世界最大規模かつ歴史の長い食品の国際コンテスト「Great Taste Award2021」で3つ星を受賞した。

 体験の場として10月開催のオンラインセミナーでは、参加者に「Botanytea」とともに小豆島産ベルガモットピールと一般的なアールグレイを事前に送付し、比較試飲の体験を実施、好評を得た。

左から企画本部企画開発ソリューション部企画開発第二室の鈴木真理子氏と企画本部ECプランニング部ECプランニング室室長兼営業本部業務用第一営業部営業第二室の中村康太氏 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
左から企画本部企画開発ソリューション部企画開発第二室の鈴木真理子氏と企画本部ECプランニング部ECプランニング室室長兼営業本部業務用第一営業部営業第二室の中村康太氏

 「山田オリーブ園さまのビデオレターも紹介したところ、小豆島のコミュニティーや観光への関心の広がりもみられた」と振り返るのは本社で製品企画に携わる鈴木真理子さん。

 そもそも「nittoh.1909」の目的について「“お茶を通して、つなぐ・かなえる・満たされる場”のコンセプトに共感して下さる方に集っていただくのが狙い。紅茶そのものを楽しむことはもちろん、何かを引き立てるものとしても紅茶は物凄く存在感がある」と力説する。

 同じくサイトのコンテンツ企画を担当する中村康太さんも「お客様の生活自体が豊かになることが大事。そこに向けて Botanytea のようなお茶の新しい可能性を感じられる商品の開発や、紅茶と相性のよいスイーツや日常を少し豊かなものにするものやブランドとのコラボレーションに取り組んでいる」と述べる。

 「nittoh.1909」では、お茶に関するコラムを多数掲載しているほか、ここでしか購入できない珍しい茶葉や旬の茶葉を販売。オンライン体験型コンテンツも魅力の一つとなっている。

体験型ECサイト「nittoh.1909(ニットウイチキューゼロキュー)」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
体験型ECサイト「nittoh.1909(ニットウイチキューゼロキュー)」

 商品は、同社専属のティーテイスターが監修する「TEA CREATOR(ティークリエイター)」、各産地の旬な味を集めた「TeaEstate(ティーエステイト)」、原料と抽出技術を徹底追求した「Cold Brew Tea(コールドブリューティー)」の3つの商品ブランドをラインアップする。
 このうち「TEA CREATOR」は、ブレンド技術の見せ所となる。

 「紅茶は産地や茶園、季節、製茶した日の気候等、様々な要因によって、品質が変動します。『日東紅茶』ブランドは、世界中の産地から調達した品質の異なる紅茶をブレンドし、たくさんのお客様にいつも変わらないおいしさをお届けしています。これに対してnittoh.1909では、ブレンドを新しい味わいを作り出す技術として位置づけ、商品開発をしています」(中村さん)という。

「The Tea for Chocolate」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「The Tea for Chocolate」

 加えて「TEA CREATOR」はティーテイスターの発信の場でもある。

 「『TeaEstate』の商品は、優良茶園のシングルエステートティーを中心に展開しており、既にそれぞれの茶園が生み出す特徴的な味わいを知っているお客様もいる。一方、『TEA CREATOR』はティーテイスターが新しいお茶の楽しみ方や可能性を提案する発信型で、お客様の声を取り入れながらまた新しい商品を生み出すというサイクルを続けている。」(鈴木さん)。

 「TEA CREATOR」でチョコレートに合うブレンドティー「The Tea for Chocolate」の開発を手掛けたティーテイスターの森智洋さんは「ブレンドによって新たな個性のお茶ができる。『The Tea for Chocolate』は6種類のお茶の個性が突出しないようにバランスを整えるのに注力した」と振り返る。

森智洋R&D本部応用開発部茶葉開発室兼経営企画部プロモーション室 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
森智洋R&D本部応用開発部茶葉開発室兼経営企画部プロモーション室

 森さんは、アールグレイを和テイストで再構築した「にっぽんのアールグレイ 橘晴(きっせい)」も生み出し日本茶AWARD 審査員奨励賞(部門2位)に選ばれる。

 「やはり国産メーカーとして日本の感性に響くようなアールグレイをつくりたいというのが出発点。和紅茶を使い、柑橘もベルガモットではなく日本古来の柑橘である柚子とミカンの皮である陳皮を配合した」(森さん)。

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